文学横浜第55号掲示板

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掲示板の主旨に反する投稿は掲載されません。掲載の是非は管理者が判断いたします。予めご了承願います。

今回より合評会の進め方を以下の様に変更いたします。
時間:1執筆者当たり20分程度を目安

■個人の感想は『掲示板』に書き込む。
■執筆者:作品の創作意図、狙い、完成度について説明。
■参加者:5~7名(挙手制)により、質疑、こうした方がよかったなど技術面を指摘。
■執筆者:上記質疑に対する応答。今後の抱負を披露。
■論評者:論評を行う。
■執筆者:論評者に質疑してもよい。
管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:28 (No.1012823)削除
⑩『スタートライン』 野守水矢著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
野守水矢さん (90kj1d4k)2024/1/29 17:59削除
私の、実質的な小説第一作です。お読みいただきまして、ありがとうございました。楽しんでいただけましたでしょうか。

《創作意図、狙い》
 主人公が想定していなかった困難に遭遇し、幼なじみの女性に助けられながら成長する姿を、帝都大学の大学院を舞台に描きました。
会社員や学生を描いた小説は池井戸潤や朝井リョウ、住野よるらがたくさん書いています。大学院を出て博士になった薄給の非常勤講師を描いた作品としては「ポスドク!(高殿円、新潮文庫)」があります。しかし、大学院生を描いた作品には出会ったことがありません。
私は理系の大学を出て技術系会社員を勤めるかたわら、大学院の社会人コースで技術経営の博士を取得しました。この経験を生かして、自分にしか書けない物語を書いてみようと思い立ちました。
 そこで書いたのがこの物語です。
 理系の雰囲気、大学院の雰囲気を醸し出すために、理系の人以外には馴染みのない偏微分方程式や量子スピン、暗号通信などの単語を挿入しました。単語の意味は重要ではありません。わからなくても、いちいち調べる必要はありません。そもそも作中の「沼瀬暗号」は架空の理論ですから。理系の雰囲気が出ていれば成功なのですが、いかがでしょう。とくに、文系の方に正直な評価をお願いします。大学院でよく使われる「D論(博士論文)」「アクセプト(論文が受理されること)」などの単語を意識的に利用しましたが、これも雰囲気が出ていれば成功です。効果はありましたでしょうか。正直なところ「イヤミな高学歴マウントをとっている」と思われるのではないかという考えが頭をかすめましたが、そこは思い切りました。

《完成度》
 読者の立場に立つと「これは完成度の低い作品です」と作者に言われたものは、読みたくないでしょう。そう思うので、その時の自分の実力を100%注ぎ込み、完成度100%の作品を提出しました。でも、今振り返ると、まだまだ筆力をつける必要があると、恥いるばかりです。みなさんの、忌憚のない評価をお待ちしています。
 もし今書き直すなら、もう少し「茉莉奈さん」に重要な役回りを演じてもらってもよかったかな、と思います。また主人公が萌花と一緒にならないで、博士を取るチャンスを捨ててシンガポールでの生活を選ぶ心理を丁寧に描きなおします。みなさんは、どのように感じられましたか。

 今後、どのような作品を書くか。正直なところ、何も決めていません。この路線を貫くなら、再び大学院生を主人公にした物語か。研究不正はもう書けませんので別のテーマでしょうか。あるいは、ガラッと変わって家庭を舞台にしますか。思案中です。
藤堂勝汰さん (910al88x)2024/2/11 23:46削除
野守水矢著 スタートラインを読んで

野守さんも最近会に入られた新しい方である。
今回のスタートラインは中々の力作である。
大学院での博士論文がテーマであり、ノーベル賞も狙える理論を実証できるのかが最大の見せ場である。まず最初に浮かんだのはスタップ細胞はありますでお騒がせさせた事件である。
あれは大学院が舞台ではなかったが、同じくノーベル賞を狙うが故に捏造された実験データの数々であった。
権威である教授に逆らえない、または崇拝から道を誤る事はこの大学の中では必要悪なのかもしれないという錯覚を思わせてしまう独特の閉鎖的な世界があるのかもしれない。
主人公の夢人もまた一旦は捏造に手を染めてしまうが、ギリギリになって、恋人の萌花の叱咤に目が覚めて、教授の沼瀬に反旗を翻すストーリーとなっている。
長い物を最後の最後まで破綻なく書き上げた努力とガッツにまず敬意を示したい。
しかしながらいくつか構成上疑問に感じる点も残った。
まず、沼瀬理論は海外では疑問視されていると言われているという最初に触れているのに、最後に間違っていたと言われてもそんなに驚かない。むしろ、何を今更という感じもした。
萌花の立場も今ひとつはっきりしない。沼瀬教授の傘下にいるように感じるが、沼瀬との関係性もあまり見えてこない。
うがった見方をすると、最初から夢人の為に登場させていると思えなくも無い。
矛盾では無いが、週刊誌に取り上げてもらうような暴露ネタという行き当たりバッタリみたいなドタバタ展開はあまり好きで無い。
なんか破れかぶれになって、自分の人生がめちゃくちゃになったので、教授はじめ大学関係者まで巻き添えにしてやるみたいな感じがあまり好きじゃ無い。
最後に萌花の誘いを断って違う所に向かうのもよく分からない。
簡単に言うと、夢人という主人公に同調できる箇所がほとんど無かった。
すごく性格の悪い言い方をすれば、自業自得だろという言葉しか残らなかった。
茉莉奈と萌花の両天秤や、博士号さえ取れればそれでいいとか、自己中の男で、お騒がせなヤツであった(笑)

とはいえ、僕がこの主人公の事を好きになれる、なれないはさして問題では無い。
僕を熱くさせた小説である事に変わらない。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/18 22:05削除
『スタートライン』を読んで 克己 黎

博士課程三年生のドクター論文作成にあたっての試験成果と恋模様。

実に読み応えある面白いストーリーでいっきに読み進めることができた。また、文章が綺麗であり、言葉の選び方や、文章の長さも読みやすく、丁寧に書かれた小説である。

作者の野守さんは大学院生を経験されたことのある、元客員教授であるためだろうか、大学院の内情、たとえば教授の横暴さや、企業との親密さなども、フィクションでありながらノンフィクションとも感じられる、リアルな筆致で描ききり、爽やかな夢人の「スタートライン」を表現した。

非常に優れた小説と感じた。また、大変面白かった。次回作も楽しみである。

2024.2.18 克己 黎
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 19:53削除
『スタートライン』感想

 大学の研究室、論文発表などのリアルをよくご存知の作者ならではの作品だと思いました。特筆すべきは、クライマックスで主人公が「不正」をやろうとするが、萌花に止められる……、落として上げるシンデレラカーブ、ハリウッド映画を観るような展開は大変面白い。

 気になった点は、ハロルド・ラムと主人公が結ばれるラストです。作者は意外性を求めたのでしょうが、このエンディングするなら、事前にハロルドと主人公の関係性を深く描く伏線が必要だと感じました。「ラブストーリーメインじゃないんだから、素直に萌花とくっつけてよ!」萌花ファンの私からの要望です。

 ちなみに、私、大学での専攻は情報数理、暗号には少々五月蝿いのです。一般人に分かるように? 専門家を唸らせる? 私自身も書いていて迷うことがあります。合評会の時には元編集者の方も来られると聞きますので、見解を聞いてみたいと思います。
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/9 19:12削除
スタートライン
脇道にそれると小さな池、レストラン「日比谷楼」、最難関の大学、これってもしかして東大のことですかあ?すごいなあ。
ゼミの中の話はちんぷんかんぷん理解不能。これってわかる人、どのくらいいるのでしょうか。よく国際会議に論文提出とかの話は聞いたことがありますが、英文添削業者がいるというのも初めて知りました。こういう院生のアイデアを盗作したりするって、本当にあり得る話のように思いました。まだまだ古い体質を持っているのでしょうね、学会というところは。毎日お弁当を作ってくる教授の娘茉利奈さんの存在は重かったです。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/13 15:27削除
ストーリー展開が面白く一気に読ませていただきました。一作目でこれだけ書けるのはすごいなと思います。ただ、人物造形が平板な感じを受けました。夢人がどうして二人もの女性を惹きつけられるのかも私には謎でした。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/15 14:34削除
力作です。そのスケール、ストーリーの起伏、内容の濃さに唸りました。作中、主人公が苦しむ論文や研究内容の詳細は、この方面に疎い小生には十分理解できない面もありましたが、研究者たちの世界がリアリティをもって活写されています。
 研究者、エンジニアたちが直面するデータ改ざんや捏造への誘惑。望ましい結果が出ず、刻限が迫り、プレッシャーのなか追いつめられた彼らは、つい魔がさしてしまう。古くは「旧石器捏造事件」(2000)、「マンションの構造計算書偽造事件」(2005)、最近でも「自動車の燃費データ改ざん」などが思い出されます。本作でも主人公は、試験データ捏造にあと一歩まで近づきます。しかし萌花の叱咤と励ましにより、直前で目が覚める展開、このあたりはハラハラさせられます。
 そしてエンディング。萌花と一緒になり研究者を続けるのかと思いきや、意外にもベンチャー企業で開発に携わる道を選択する主人公。しかし考えてみれば、この決断こそ『スタートライン』の題名にふさわしいと思えてきます。
 ひとつだけ疑問があります。沼瀬教授が自身の理論の正しさを疑わなかったことはわかるとしても、それほど注目を浴びた理論・方法なら、少なくとも国内の研究者(身内以外)の誰かが沼瀬理論を検証する実験を、主人公よりも先に実施しそうなもの、という点です。理論の正しさが実証できない、再現できないとの声があがっても不思議はないと思います(例のSTAP細胞(2014)のときのように)。きっと国内での沼瀬教授の権威が絶大で、まわりも太鼓持ちばかり、完全に裸の王様だったのでしょう。
 いずれにしても、読み応えのある上質な作品です。次回作が楽しみになりました。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:35削除
大学の研究室における院生を巻き込んだ研究の捏造をテーマにした小説として読みました。

ドクターを取るための研究室内における、担当教授をトップにした組織的な人間関係もあからさまに描いています。
この小説のようにドクター論文のテーマを担当教授から与えられるケースもあるのでしょうが、誇張はありますが、研究室内の人間関係はこの小説のような世界なのでしょう。

 研究室も研究費を集めるためには民間からも集めなければならないのは現実で、全てを担当教授が権限を持っています。小説では秘書として研究室長の娘がいますが、松本清張の世界では愛人を配置したり・・・。
 最後はハッピーエンドでしたが、日本の研究分野では、現在でも特に助手の待遇問題が大きいと思います。

 面白く読みましたが、以下の2点が気になりました。、
1,174ページ上段あたりに出てくる実験ですが、どうも十分に確認作業もせずに、いきなり関係者を集めて実験したようにしか思えなかった。
2,194ページ上段から下段の繋がりが不自然におもえる。1行空けて、場面が変わるのでしょうが、つなぎの文が必要なのでは?
池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 19:48削除
STAP細胞騒動が典型だが、学術論文の捏造が世間を騒がせるのは生命科学系が多い。新薬開発など巨額マネーが絡むうえ、実験データの評価などであいまいな領域が大きいからかもしれない。一方、暗号通信は(実験はいうにおよばず)数学的にも正誤が判断しやすく捏造が難しい(捏造してもすぐばれてしまう)イメージがあり、本作品がこの分野をテーマに選んだのは意外だった。実はあまり表面化していないだけで、こうした問題はけっこう起きているのだろうか。
由宇(ふくしま)さん (90o5adff)2024/3/24 17:44削除
うーん、自分としては食傷気味よりの感があります。

(以下勝手に感じたことですが・・・)
大学制度、博士号などのアカデミック等のコンプレックスを、作品で昇華している感が正直否めなく
出演者の相関・コアとなるストーリーにリアリテイが乏しい。

とにかくアカデミックありき、、そこをブランデイングしたいのはよくわかるのですが・・・・
見抜く読者は少なくないのでは。

主人公は作者の表現上では「イノセントで清潔感あるモテル男性」なイメージを醸し出そうと、表現をされていますが
形而上の表現で受けとったイメージは、「野暮で品がないつまらないヤツ感」が透けてみえてしまうのですね。

あえて、(潜在的)コンプレックス文学というならば、この限りではないですが・・・
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/3/24 21:55削除
なんだか、大学研究所内に本当に現存している因習のようで、臨場感をもって面白く読んだ。
「D論」「アクセプト」等の私にはちんぷんかんぷんな単語も、ストーリーに障らない程度に補足してあり、わからないなりに鵜呑みにして読むことができた。理系の専門用語も狙い通りの雰囲気作りに、クールに役立っていると思う。これがなければ、ノーベル賞級の研究としてとらえて読むことはできなかったと思う。
若さと未来への希望を放っての結びに好感をもった。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/26 11:48削除
なかなかの力作ですね、面白かったです。 ‥‥ が、アメリカに逃げるところが結末とは悲しい。アメリカに行かなければまともな研究ができない大学の世界とはね ‥‥ そんな話は他でも聞いたような気がするけれど。
 日本人の意識では、学説=その人自身、というように認識されてしまうところがあるので、間違った学説でも批判できない ‥‥ 学説を批判することは、その人自身を批判することになる ‥‥ その帰結として、日本では教授の云うことは絶対! ということになるそうです。しかしそれは非常に困ったことだ。
 《ではの守》になってしまうけれど、外国の大学《では》、学説と人物は切り離して議論をするのが普通とのことで、それで恨みを買うということは基本的に無いそうです!?!

山口愛理さん (92ty90w3)2024/3/28 17:28削除
上昇志向のある大学院生の研究と自己アピール、彼を取り巻く人間関係、女性関係が面白おかしく綴られており、難しくて分かりにくい世界ながらもエンタメ小説風に興味深く読めた。
関西弁を多用しているのも臨場感があり、ともすれば固くなりがちな物語をやわらげるのに役立っている。一人一人のキャラクターも特色が出ていて良かった。ディフェンスでの彼の大笑いは劇画的すぎるかな、と思ったが。
ただ、全体的に前半は丁寧な運びだが、最後の方がやや急いでまとめようとした感がある。「ハロルド・ラムにメールを打った」といきなり出てくるが、私は、この人誰だっけと戸惑った。読み返すと前に一回出てきているが、さりげなすぎて読者は覚えていないだろう。エピソードをもう少し入れておくなど、程よく印象に残してほしかった。
また、彼がボストンへの萌花の誘いをきっぱり断ったのは、ちょっと解せなかった。ここまで読んで、彼のキャラクターなら受け入れるのでは、と思ったからだ。「喜んでいいはずなのに心が動かない」という気持ちの変遷をもうちょっと書き込んで欲しかった。今は別々でも、萌花との未来もありそうな予感を漂わせるとかして。
匿名さん (90kuq21b)2024/3/31 23:28削除
スタートライン 感想 藤野燦太郎

教授の過去の有名論文、理論、仮説が誰かの発見でひっくり返ったりすることは、時にあることだと思います。作品は最初からいい感じで進んで来たのに、「ぼく」の学位論文審査会を、突然主任教授の「暗号通信理論」が誤りだという告発会に変えてしまった主人公に大きな違和感を覚えました。さらに、「週間春潮」、「春潮砲」、「上級国民のエゴ」「総長が国会に呼ばれ」などの言葉が並んでくると、申し訳ありませんが、突然安っぽく感じてきました。さらに大学を大混乱させた後に、主人公がシンガポールの実業家と会うために国を出るというラストにさらに驚きました。

作者の構想は主人公に教授や研究室を告発するところまで決まっていたのでしょう。
もし自分だったら、最後にうだつが上がらない万年講師横山や未来を夢見る独身の茉莉奈と対決させたと思います。彼等にはそれぞれ別の人生観があると思います。対決させれば「ぼく」の生き方も厳しく問われるし、結末がずれてくるように思います。作者の構想に反旗を翻す人物が小説を奥深くするように思います。偉そうなことを言ってごめんなさい。
十河さん (934opo11)2024/4/3 05:58削除
・スケールの大きい元気のある小説。場面転回が多くスピード感もある。
・読者の裏をかくような細工がいくつか施されている。
・読んで手に汗にぎり、興味深いが、中心にある大学の一つの研究室全体が捏造をしつづけるという設定が、現実的にどうかとの疑念が残る。アカハラならそこいらにころがっていても不思議ではないが。
・一読してテレビの「半沢直樹」シリーズを思いだした。
野守水矢さん (939e2n45)2024/4/6 12:54削除
《はじめに》
野守水矢です。
ご批評、ご感想をいただきました皆さん。熟読いただき、ありがとうございました。その上、建設的なアドバイス、ご指摘、およびご感想を多数いただきまして、嬉しい限りです。自分の筆力の至らなさは今更いうまでもありませんが、改善するための糧とさせていただきます。
四月六日正午までにいただきました感想につきまして、以下に作者からのコメントを返させていただきます。全てのご感想に対して応え尽くしていないところは、ご容赦ください。明日四月七日の合評会では、私からはこれを元に発言いたします。そこから発展的なディスカッションを行うことができれば幸甚です。

《研究不正について》
池内さん:STAP細胞騒動が典型だが、学術論文の捏造が世間を騒がせるのは生命科学系が多い。新薬開発など巨額マネーが絡むうえ、実験データの評価などであいまいな領域が大きいからかもしれない。一方、暗号通信は(実験はいうにおよばず)数学的にも正誤が判断しやすく捏造が難しい(捏造してもすぐばれてしまう)イメージがあり、本作品がこの分野をテーマに選んだのは意外だった。実はあまり表面化していないだけで、こうした問題はけっこう起きているのだろうか。
→実際、研究不正は、大学や研究機関で重大な問題となっています。具体的な手口は「Science Fictions あなたが知らない科学の真実」(スチュアート・リッチー著、矢羽野薫訳、ダイヤモンド社)に詳述されています。この本は難解です。「背信の科学者たち 論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか」(ウィリアム・ブロード、ニクラス・ウェイド著、牧野賢治訳、ブルーバックス 講談社)は理系の人向きの読み物で、「Science Fictions あなたが知らない科学の真実」よりは読みやすいと思います。研究不正は生命科学にとどまりません。作中のどこかに説明を入れておけば親切でしたね。

上終さん:検証する実験を、主人公よりも先に実施しそうなもの、という点です。理論の正しさが実証できない、再現できないとの声があがっても不思議はないと思います(例のSTAP細胞(2014)のときのように)。
→残念ながら、多くの研究は再現性の検証がされていません。研究論文は「新しい発見」がないとアクセプトされません。「従来の理論が確かめられた」という論文は「すでに知られていることを確認した」だけで「新しい知見を発見していない」ので、価値を認められないのです。「STAP細胞はできない」との検証結果は、小保方氏の荒唐無稽な主張を封じる役には立ちましたが、そこから新しい知見は得られません。

藤堂さん:沼瀬理論は海外では疑問視されていると言われているという最初に触れているのに、最後に間違っていたと言われてもそんなに驚かない。
→誤りの証明をご都合主義にしないための伏線として入れましたが、もう少しわかりにくいほうがよかったのでしょうか。

十河さん:大学の一つの研究室全体が捏造をしつづけるという設定が、現実的にどうかとの疑念が残る。
→実際には存在しないと思います。実作上の問題として、リアリティのある嘘は加減が難しいですね。もっともらしい嘘でも、詳しい人は違和感を持ちますから。

原さん:脇道にそれると小さな池、レストラン「日比谷楼」、最難関の大学、これってもしかして東大のことですかあ?すごいなあ。
→はい、そうです。東大は何度か訪問したことがあります。三四郎池、松本楼、スターバックスがありました。

原さん:よく国際会議に論文提出とかの話は聞いたことがありますが、英文添削業者がいるというのも初めて知りました。
→英文添削業者は高いし、当たり外れがあります。業者というより、添削者に当たり外れがあります。ちなみに、今の研究者は日本語で書いて翻訳アプリで英訳するそうですが、アプリがポンコツだった頃は、初めから英語で書いたものです。

《学術用語》
原さん:ゼミの中の話はちんぷんかんぷん理解不能。これってわかる人、どのくらいいるのでしょうか。
大倉さん:「D論」「アクセプト」等の私にはちんぷんかんぷんな単語も、ストーリーに障らない程度に補足してあり、わからないなりに鵜呑みにして読むことができた。理系の専門用語も狙い通りの雰囲気作りに、クールに役立っていると思う。これがなければ、ノーベル賞級の研究としてとらえて読むことはできなかったと思う。
→「夜と霧の隅で(北杜夫)」「チーム・バチスタの栄光(海堂尊)」などの学術用語でリアリティを出す手法を参考にしました。

《人物造形全般》
いまほりさん:人物造形が平板な感じを受けました。
山口さん:一人一人のキャラクターも特色が出ていて良かった。
→正反対の感想をいただき、びっくりしました。

《人物造形:堀川夢人》
藤堂さん:茉莉奈と萌花の両天秤や、博士号さえ取れればそれでいいとか、自己中の男
由宇さん:野暮で品がない
→描こうとした夢人は、ほぼご理解のとおりの人物です。英雄譚ではないので、そもそも主人公を好青年とする設定は必要はありませんでした。むしろ、正義感を貫くときもあれば保身にも手を染める普通の人間、カッコいいところとカッコ悪いところをあわせもつ青年の復讐譚です。私は、「弱さを持った普通の人が迷い苦しんだ末に、闘ってブレイクスルーを起こす物語」を書きたいと思っています。今はそのための修行です。
由宇さん:主人公は作者の表現上では「イノセントで清潔感あるモテル男性」なイメージを醸し出そうと、表現をされていますが
→先に述べた理由で、そのような人物描写はしていないつもりだったのですが、もっとわかりやすく表現できるよう精進します。

いまほりさん:夢人がどうして二人もの女性を惹きつけられるのかも私には謎でした。
→いいご指摘です。すっかり抜け落ちていました。理由となる表現を1行か2行書いておくだけでよかったのに、と反省しました。建設的なご指摘、ありがとうございました。

《人物造形:花瀬萌花》
藤堂さん:萌花の立場も今ひとつはっきりしない。沼瀬教授の傘下にいるように感じるが、沼瀬との関係性もあまり見えてこない。
→萌花は沼瀬研ではなく、前川研の講師です(p166上L16-17)。したがって、沼瀬教授の影響下にはありません。前川教授と沼瀬教授の確執で研究室が分裂しましたが、両研究室はほとんど同じ研究をしています。 (p177上L1-7)。いくら確執があっても大学教授は紳士ですから、萌花が沼瀬ゼミを傍聴するのは妨害しません。

《人物造形:茉莉奈さん》
原さん:毎日お弁当を作ってくる教授の娘茉利奈さんの存在は重かったです。
→ありがとうございます。一人称で、夢人の目に入るものしか描いていないので、茉莉奈さんの心の機微は描けませんでした。これをうまく描けるようになるには、まだまだ努力が必要です。それができればサブプロットとして「夢人にとっては打算の関係、茉莉奈さんにとっては純愛、そこに萌花が入って来て……」という純愛と打算の三角関係が作れます。面白い長編ができそうですが、今の私の筆力では難しい課題です。精進します。

《リアリティ》
克己さん:大学院の内情、たとえば教授の横暴さや、企業との親密さなども、フィクションでありながらノンフィクションとも感じられる、リアルな筆致で描ききり、
上終さん:研究者たちの世界がリアリティをもって活写されています。
山口さん:関西弁を多用しているのも臨場感があり
金田さん:担当教授をトップにした組織的な人間関係もあからさまに描いています。
金田さん:誇張はありますが、研究室内の人間関係はこの小説のような世界なのでしょう。
大倉さん:なんだか、大学研究所内に本当に現存している因習のようで、臨場感をもって面白く読んだ。
上終さん:研究者たちの世界がリアリティをもって活写されています。
→お褒めの言葉として、励みにさせていただきます。ありがとうございます。

由宇さん:出演者の相関・コアとなるストーリーにリアリテイが乏しい。
→勉強のため、具体的に教えてください。

金田さん:1,174ページ上段あたりに出てくる実験ですが、どうも十分に確認作業もせずに、いきなり関係者を集めて実験したようにしか思えなかった。
→おっしゃるとおりです。気がつきませんでした。沼瀬教授に「検証なんかいいから、早く見せてくれ」とせかされた設定にでもすれば、この部分のリアリティが改善されたかもしれません。ありがとうございます。

《スリーリー展開》
いまほりさん:ストーリー展開が面白く一気に読ませていただきました。
上終さん:萌花の叱咤と励ましにより、直前で目が覚める展開、このあたりはハラハラさせられます。
里井さん:落として上げるシンデレラカーブ、ハリウッド映画を観るような展開は大変面白い。
克己さん:読み応えある面白いストーリーでいっきに読み進めることができた。
→シンデレラカーブと対立構造を意識してプロットを作りました。セオリーどおりです。ハリウッド映画はさすがに褒め過ぎです。
十河さん:一読してテレビの「半沢直樹」シリーズを思いだした。
→テレビの「半沢直樹」は見ていませんが、池井戸潤の作品は何作か読みました。
「抑圧された普通の人間が闘って復讐を遂げる」という点はたしかに似ていますね。

《ディフェンス以後のストーリー》
山口さん:最後の方がやや急いでまとめようとした感がある。
藤野さん:学位論文審査会を、突然主任教授の「暗号通信理論」が誤りだという告発会に変えてしまった主人公に大きな違和感を覚えました。
藤野さん:「週間春潮」、「春潮砲」、「上級国民のエゴ」「総長が国会に呼ばれ」などの言葉が並んでくると、申し訳ありませんが、突然安っぽく感じてきました。
藤野さん:作者の構想は主人公に教授や研究室を告発するところまで決まっていたのでしょう。
→正直なところ、この部分は、どのように書くかいちばん悩んだところです。丁寧に書くと規定枚数を軽く上回りそうだった上、クライマックスの後の「解決編」なので、さらっと終わらせたい気がありました。反面、何事も起こらずにあっさり済ませるのも面白くない、と迷った結果です。消化できていないまま書いたのが、一目瞭然だったのですね。精進します。

藤野さん:作者の構想に反旗を翻す人物が小説を奥深くするように思います。
→重いアドバイスです。「作者の構想に反旗を翻す人物」とは、どのように動く人物なのでしょうか、教えてください。「もっと勉強せよ、もっと引き出しを増やせ」という叱咤として受け止めさせてください。

《エンディング》
山口さん:「ハロルド・ラムにメールを打った」といきなり出てくるが、私は、この人誰だっけと戸惑った。読み返すと前に一回出てきているが、さりげなすぎて読者は覚えていないだろう。エピソードをもう少し入れておくなど、程よく印象に残してほしかった。
里井さん:気になった点は、ハロルド・ラムと主人公が結ばれるラストです。作者は意外性を求めたのでしょうが、このエンディングするなら、事前にハロルドと主人公の関係性を深く描く伏線が必要だと感じました。「ラブストーリーメインじゃないんだから、素直に萌花とくっつけてよ!」萌花ファンの私からの要望です。
上終さん:そしてエンディング。萌花と一緒になり研究者を続けるのかと思いきや、意外にもベンチャー企業で開発に携わる道を選択する主人公。しかし考えてみれば、この決断こそ『スタートライン』の題名にふさわしいと思えてきます。
金田さん:最後はハッピーエンド
藤野さん:最後にうだつが上がらない万年講師横山や未来を夢見る独身の茉莉奈と対決させたと思います。彼等にはそれぞれ別の人生観があると思います。対決させれば「ぼく」の生き方も厳しく問われるし、結末がずれてくるように思います。
山口さん:彼がボストンへの萌花の誘いをきっぱり断ったのは、ちょっと解せなかった。ここまで読んで、彼のキャラクターなら受け入れるのでは、と思ったからだ。
山口さん:「喜んでいいはずなのに心が動かない」という気持ちの変遷をもうちょっと書き込んで欲しかった。
大倉さん:若さと未来への希望を放っての結びに好感をもった。
港さん:アメリカに逃げるところが結末とは悲しい。
藤野さん:大学を大混乱させた後に、主人公がシンガポールの実業家と会うために国を出るというラストにさらに驚きました。
→これはハッピーエンドなのかバッドエンドなのか。エンディングの解釈と夢人の萌花からの別れに、これほど賛否が別れるとは思っていませんでした。作者の意図がうまく描けなかった証拠ですね。作者としては、これは新たな「スタートライン」、ハッピーエンドです。里井さんのご指摘のように、夢人が萌花から離れ、シンガポールに行く決断が読解できるような伏線を2-3行入れておくべきでした。言われて気づきました。みなさん、ありがとうございます。

山口さん:今は別々でも、萌花との未来もありそうな予感を漂わせるとかして。
→このアドバイスには、思わず唸らされました。ありがとうございます。ほのぼのとした余韻を残すいい終わり方のご提案です。これをエンドに持ってくれば、小説全体にグッと深みが増しますね。

《その他》
金田さん:2,194ページ上段から下段の繋がりが不自然におもえる。1行空けて、場面が変わるのでしょうが、つなぎの文が必要なのでは?
→ご指摘のとおりです。ありがとうございます。

以上。
返信
返信16
管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:18 (No.1012802)削除
②『ラ ンナー2024』 藤堂勝汰著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
藤堂勝汰さん (8ywajz8f)2024/1/29 15:59削除
■作品の創作意図、狙い、完成度について
合評会に先立ち、里井雪さん が早速<創作意図について>掲示板に記しているのを拝見しましたので、自分も創作意図、狙い、完成度等について作者として触れてみたいと思います。


<作品の創作意図、狙い>
 後記でも記しましたが、2023年春、テレビで原裕美子さんのドキュメンタリーを観ました。
元女子マラソン日本代表の原裕美子さん。2005年に名古屋国際女子マラソンで初マラソンながら初優勝し、同年の世界陸上ヘルシンキ大会では日本人選手最高の6位入賞。2007年には大阪国際女子マラソンで優勝しました。その一方で原さんを悩ませ続けたのが『摂食障害と窃盗症』です。「食べ吐き」をするための食料を万引きして、これまで7回逮捕され、去年末まで執行猶予中でした。

 (原裕美子さんコメント)
 「もうしない、絶対やめなきゃって自分に誓うんですけど、また繰り返してしまう。だめな自分なんだ、だめな人間なんだ、なんでこんなに心が弱いんだろうというふうに思っていました」
 
 原さんは有望なマラソンランナーであったが摂食障害から万引をするようになり人生を踏み誤った。
番組を観ていて感じたのは、もしも彼女の傍にお節介な人間が居たら、道を外さなくても済んだんじゃないかということだった。
そう思ったらこれをテーマに書きたくなった。
 心が弱く、薬に溺れてしまう人、ギャンブルから抜け出せない人、摂食障害から万引きを繰り返す人、そしてそんな人が身近にいる場合、登場人物の長瀬来太の様に「お節介」を承知で寄り添う人がいて、その人間が手を差し伸べてくれる温かさを表現したいと思った。

<完成度について>
 まず本作は「ランナー」シリーズ第2弾の作品です。
前作を読んでいない方は分からないかもしれませんが、どちらも「ハンデ」を背負った「日野瑞稀」がオリンピック・パラリンピックを目指す主人公として登場します。
そういった意味で、パート3に無事橋渡しができたと感じております。
第3弾の表題は「ランナー 2028」だけは決まっております(笑)
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/18 08:58削除
『ランナー2024』を読んで 克己 黎

マラソン選手の摂食障害と万引き常習を扱った作品。
摂食障害に関しては、いっときわたしは経験している。食べて満たされる、過食であった。ただ、万引きはしようとは思わなかったし、吐いて出そうとすることはしなかった。

しかし、満ち足りてない気持ちを食べることで満足感や達成感を得ようとする気持ちだけはあった。

今回のマラソン選手の瑞稀は体重制限のため、減量を課されているプロのマラソン選手であるから、課されたプレッシャー、重圧と、空腹感で気がおかしくなってしまったのだと、思う。

非常にデリケートな問題であるから、来太の作戦が対処療法として有効であるとは、考えにくい。

また、
「そう言って笑った。来太はそんな子供みたいな笑い方をする瑞稀が愛しかった」※
四十七頁、二十一行目〜二十二行目

とあるが、「愛し」い、と、来太が瑞稀を思うのが、やや私は理解ができなかった。

来太の瑞稀への治療は、あくまで来太自らもマラソン選手であった経験があり、現在はスーパーの店長をしている立場から、瑞稀に対して、食品を万引きしたいと思う前に我慢して、我慢できなかったら自分に言ってくれ、と提案したものであり、行間を読む限り、慈善に近い提案である。

しかし、これは来太の勝手な治療法であり、摂食障害の人に当てはめるにはやや強引ではないだろうか。摂食障害の人は心に傷があり、摂食障害に至る場合が多くあり、その治療のためには時間と病院の治療や本人の努力、食事療法、薬剤投与、などが必要だからである。

さらにいえば、瑞稀は何度も万引きをしているため、ラストシーンで瑞稀にパリ五輪の参加資格が与えられたが、万引きをした事実をマスコミが嗅ぎつけ、剥奪されるであろうという、次の結末があるだろう。

マラソン選手の孤独さや枯渇を描きながら、その点に配慮をされていないのは残念であった。

2024.2.18克己 黎
由宇(ふくしま)さん (90o5adff)2024/2/20 21:28削除
『摂食障害・クレプトマニア(窃盗依存)そしてスポ根』

自分勝手な小説見極めではありますが、いい作品は「一気によめる」もしくは
「また再度、読み始める時間がまちどうしい」ことが自分軸の中では大きいです。

さて本作品。題材が垂涎のごとし、著者様の着眼点、素晴らしく、興味がつきない素材だと思います。
物語の途中まで、一気に読めました。(元箱根ランナーが主人公と出会うまで)です。

窃盗を施した際、仲間に電話をし、「引き受け」を頼む、くだり。
また、その仲間からの「寄り添わないトコロの真をつく、説教』の描写はつかまれかけました。


しかし・・・・

後半。。
リアリテイが感じられなくなるのです。人物相関に無理があるため、読むのがストップしてしまいます。
綺麗な文章の中に、心(理)が入り込んでないので、テイストがぼやける感じ。。。

「最高の素材をカレーにぶちこんだため、素材の元の味がわからなく、カレーだけになった」

感とでもいいましょうか。

スポ根というカレーに飲まれ摂食障害と窃盗依存がどこかにいってしまっては、ないでしょうか。

生意気な批評にて、ご容赦ください。
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/25 20:58削除
摂食障害と万引き依存症の重荷を背負ったランナーが、本人の努力と来太のサポートでオリンピックの出場権を手にいれる、という意思と努力の成功物語。作者のメッセージは「なせばなる」であろうか。
物語の設定と展開には、大まかにいって以下の三点に無理がある。リアリティがないのである。
まず、オリンピアンを出そうかという実業団チームなのに、スポーツドクターが登場しない。いたとして、スポーツドクターは主人公の変調に気付かなかったのだろうか。主人公が摂食障害や万引き依存症になるまで放置しておいたのだろうか。それとも、この実業団にはスポーツドクターなどおらず、健康管理は本人任せだったのだろうか。
次に、監督は摂食障害の治療を受けろとは言わず、来太は禁断症状を精神力で乗り越えろ、とアドバイスする。なんと無責任な人たちだろう。オリンピック優先で、主人公の治療は二の次でいいのか。
最後に、摂食障害にも万引き依存症にも手を打たない状態でオリンピックの出場権を得ても何の解決にもならないのではないか。摂食障害も万引き依存症も精神論では治療できないが、このまま騙し騙しオリンピックまで引っ張るつもりだろうか。治療を捨てて隠蔽に走るのでは、組織も人間も失格である。これでは主人公が、あまりにも可哀想だ。
つまるところ、この作品はスポ根アニメ、熱血青春ドラマの精神論の再現なのだ。
次作が続編になるのなら、そこでは科学的、医学的な治療を受け、犯罪を償い、健康と明るさを取り戻した主人公を見たいものである。
次作は期待している。ご健筆を。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 20:21削除
『ランナー2024』感想

 長距離競技の知識が豊富な作者ならではのストーリー。オリンピックの「現実」をみているようです。私も健康管理のためにジョギングをしていたことがあり、興味深く読ませていただきました。

 ただ、全体として、文学作品なのか、エンターテインメントなのか、やや中途半端な気がしました。

 エンタメとすると、あくまで「私なら」です……。

 プロローグは、日野瑞稀のインタビューシーンから。彼女はオリンピック優勝を果たしている。会見会場で「ここまでの道のりは?」に答える瑞稀「いろいろありました……」と振っておいてから、万引きシーンへ。計算された「演出」があってもいい気がします。ウケ狙いで瑞稀一人称もいい。

 ラノベを書いている身からすると、藤堂さんを、その方向に誘いたくなる、という意味ですので、ご無礼お許しください。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/7 16:47削除
これは実話をヒントにして書かれた作品なのですね。摂食障害と窃盗症で7回逮捕され執行猶予中という彼女の人生の重さを考えると、この作品に流れるエンタメ的な要素とは相容れないように思います。こんな重いテーマを選ばなかければ、読者を引き込み面白く読ませる力量をお持ちなのにと思いました。この作品の中で私が一番疑問に思ったのは、来太が伊達監督を恩師と言っているにもかかわらず、その監督の指導を信頼して任せることをせず、自分のやり方の方が彼女を救えると考えて実行するところです。大きな矛盾ではないでしょうか?
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/8 16:05削除
ランナー2024
「ある日スーパーに入った際、日野瑞稀はクリームがはみ出すパンから視線がはずせなくなった」という冒頭のつかみがうまいと思います。「オムライスがその圧倒的な黄色を発散させ」などの表現の鋭さがあちこちに見え、構成も文体もそつなくよく書き慣れている作品だという印象を受けました。
ただ一点、摂食障害はなかなか困難な病気で、簡単には回復できずしかも長い時間がかかります。摂食障害をかかえた人間がマラソンという肉体を極致まで消費する強靱な体力を持ち得たとはとうてい思われず、まして優勝までいくと一挙にリアリティーが落ちてしまう気がします。その辺に作者の優しさが裏目にでてしまったようにも思われます。主人公のゴールは優勝ではなく、ふたたび走ることの喜びを感じるところでよかったのではないでしょうか。
匿名さん (90kuq21b)2024/3/10 00:28削除
ランナー2024 藤野燦太郎 感想
将来を期待された女性ランナーが、摂食障害、窃盗症に苦しみながらも、監督や来太などの応援のおかげで、大逆転の末一位となりパリオリンピックの派遣切符を勝ち取る。このような流れで作者の前向きで誠実な人柄がよく表れた内容でした。ですが私は二つの違和感を覚えました。
1.自分は日々胃内視鏡検査をやっておりますが、30年ほど前に摂食障害で29kgになった22歳女性を診察したことがあります。夕食後に2階のトイレでげろを吐いている。食べるなといっても自分で大量の駄菓子を買って来て、また吐いているとのことでした。そのころ自信過剰だった私は「自分がなんとかやってみますと」母親に宣言し、胃薬を変更したり、成育歴にヒントはないかと小学校、中学校の塾通いや親の過剰な期待などを探ったりしましたが、全く改善しませんでした。消化器内科の集まりで3人の専門医に意見を求めましたが、「無理じゃない」と始めから相手にしてくれません。ずるずると月日がたったある日、母親が来て昔精神科にかかったことがあるという話をしてくれました。「その精神分析医は『母親が敵』と言ったんですよ」と、意外なことを明かしてくれました。
そうこうしているうちに彼女は来なくなりました。ところが8年ほどたって、ひょっこり母親が来院。「娘が結婚し出産しました。10kgも太ったんですよ」と報告してくれました。母親の話によると、ある学校の教師が結婚してほしいといって来て、「自分がすべて面倒を見るから安心して僕の所へ来てくれ」といったというのです。彼女の両親は大反対、まともな結婚生活にならない、戸籍を汚し迷惑をかけるだけ、と反対しましたが、彼の熱意に負け了承したのだそうです。奥の深い病気だと思っています。
2.ラストを優勝ではなく、5位ぐらいにして、優勝者を囲む人だかりの横で、監督に抱かれる瑞樹を描写して終わるほうが感動するように思いました。水泳の池江璃花子が白血病から生還しましたが、10kも痩せて骨と皮になり、しかも抗がん剤で坊主頭になりながら練習を再開し、復帰戦で世界レベルからは遠いけれど日本大学選手権の標準記録を突破した時は大きな感動を呼びました。ささやかな一歩でも万人の胸を打ちます。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/15 14:44削除
TVの「スポーツ感動二時間ドラマ」になるような小説だと思いました。これは実話からヒントを得たフィクションとのことです。
 体重を落とすためにランニングをするくらいですから、練習であれほどの距離を走るマラソンランナーに減量は無縁と思っていましたが、そうではないのですね。
 瑞稀へ無償の支援を申し出る来太、そして来太への信頼を心のささえに、精神論で苦境を脱してゆく瑞稀。このような物語はスポーツ、とくに精神力が大きく影響するマラソンのようなスポーツと親和性があります。作者には、人と人との信頼関係に対する憧憬があるのでしょう。全体として、さわやかな印象をもちました。
 ところが小説の最後、諏訪湖マラソンで結果を出すために、来太と瑞稀が画策して、仲間を欺く芝居を演じます。レースで自分がマークされないための偽装なのですが、このくだりが、小生にはややあざとく感じられました。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:07削除
オリンピックを目指す選手の摂食障害を描いた小説として読みました。
オリンピックを目指すには並みの練習では目的はかなわないのは確かでしょうが、摂食障害を起こす程の、つまり根性論的な鍛え方に対する作者の考えが見えないのが残念。

 小説的には長瀬来太のサポートもあって選考レースで良い結果に終わってめでたし、めでたし。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/16 21:50削除
藤堂さんは「もしも彼女の傍にお節介な人間がいたら ‥‥ 」という発想からこの物語を書いた、と《後記》に記しておられますが、この発想は素晴らしいと思う。人のために骨を折ろうとする人を「お節介」とか「余計なお世話」などと云って忌避し、そんな人を「変人」あるいは「迷惑な人」扱いするような風潮もあるようだけれど、そんな社会だからこそ「お節介」が必要なのだと思う。昔は「お節介」な人が多くいたから社会には柔軟性があり、人々の表情も明るくて、生きることがもっと楽しかったような気がします。
 また藤堂さんの作品は、マラソンとなると一味違ってくる。この作品を原作にして、テレビドラマがひとつ作れそう ‥‥ 53号の『ランナー2020』と同じく、ハッピーエンドで終わるところも後味がいいのではないですか。

池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 19:10削除
オリンピックを狙う一流選手が、藁にもすがる気持ちとはいえ、突然訪れた一介の陸上経験者に頼る展開はやや無理があるように感じた。また、摂食障害や盗癖(クレプトマニア)といった依存症が、素人の熱血指導によって治癒されうるのかも疑問に思った。そうした小賢しい指摘を吹き飛ばすほどの快男児、ということなのだろうが……。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/4/1 16:40削除
前回から続くマラソンもの。しかし今回は摂食障害から万引きをするようになったランナーの物語。実際にあったことからヒントを得て創作として書かれている。
全体に爽やかなスポーツものとして読めるのは良い。が、オリンピックとなると別物。ずっと真面目に走っていた選手でさえ超難関なのに、精神的にも肉体的にもこんな状態だった選手が短期間で代表にまでなれる走りができるだろうか、という疑問が湧いてしまう。
オリンピックだけが人生ではないはず。やるだけやって惜しくも駄目だったが、自分を取り戻し、その過程で新たな価値ある人生を見つけることができた、そんな展開にしても良かったのではと思った。
十河さん (934opo11)2024/4/3 05:55削除
表題から、陸上競技に打ちこむ主人公を描いたさわやかな青春小説かと思ったが、その予想はのっけからくつがえされる。

 それはいいが、オリンピックをねらうトップアスリートが摂食障害におちいり万引きをくり返し、クライマックスにむかってさまざまな出来事が起こってゆくとの筋書きは――現代のアスリートのおかれた極限状態の一つがこのようなものであることを示しているのだろう。そのあたりをうまくすくいとった作品といえる。

 しかし、あまりにも題材がそろいすぎていて“予定調和的”な感じもした。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/4/4 21:48削除
ストーリーをおもしろく読みました。光の表舞台に出るには必ず影が生ずる。光と影は対、影も力にしなければ強くなれない…ということか。
 常に読者を意識して書いている作品と思う。
返信
返信15
管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:23 (No.1012814)削除
⑥『野鳥おりおり (三)』 篠田泰蔵著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
藤堂勝汰さん (910al88x)2024/2/9 18:53削除
野鳥おりおり(3)篠田さんを読んで
申し訳ないが、僕自身野鳥観察にあまり興味を持てない人間なので、(1)から続く野鳥おりおりシリーズの細かな違いを判断できません。
恐らく、野鳥好きな方が見て読めば、よだれものなのだろうと思います。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/17 21:26削除
『野鳥おりおり(三)』を読んで 克己 黎

一、はじめに
作者の住む町田市での野鳥観察記録。

作者の野鳥シリーズを拝読したのは、私は今回、二回目である。

なぜ作者の篠田さんが野鳥についてこれだけ熱く語れるのか。なぜ野鳥なのだろう。なぜ、文鳥やカナリヤなどのペットショップから買ってきた飼鳥観察ではないのか。また、動物園のペリカンやフラミンゴ観察ではないのか。そこに着目した。

野鳥は自由気ままに空を飛ぶ。つがいになり、子を育む。エサは自分たちでとる。寝床も自分たちで作る。しかし、獰猛なカラス、鷹などからは自分たちで逃げたりして身を守らなければならない。

一方、動物園のペリカンやフラミンゴ、オウム、あるいは家庭で飼われるインコ、ジュウシマツ、文鳥、カナリヤ、キンカチョウ、ウズラなどは、管理されているため、自由があまり無い。しかしエサは与えられ、病気になったら、医者にかかることができることもある。また獰猛なカラスや鷹、他の動物からは守られている。

思うに自由気ままに生きるのが、生命としての本望である、との作者のメッセージが根底にあるだろう。

さて、本文ではカイツブリ、ダイサギ、ムクドリ、ゴイサギ、ウグイスの記録がつづられている。

二、カイツブリ
『野鳥おりおり(三)』では、カイツブリの雛が弱肉強食により、わずか二日間で二羽いなくなってしまった無情さを記している。※百六頁、一行目〜七行目

しかし、カイツブリの親の粘り強く餌を拾っては雛に与える様子も述べられている。※百六頁、十七行目〜十九行目、百九頁、写真

三、ダイサギ
ダイサギのザリガニ捕獲の瞬間をとらえた写真が撮れたことが驚きである。※百十三頁、写真⑨
ザリガニを何度もひきちぎり、圧し潰し、グニャグニャになってから飲み込んだダイサギの様子を、作者は次のように表現した。
「ダイサギの一連の行為には狡賢いまでに冷厳さを感じさせられたが、それと同時に、全て理に適っており、何一つとして無駄と思われる動作はなかった。」※百十二頁、十七行目〜十九行目

四、ムクドリ
大群のムクドリを率いるリーダー格のムクドリの写真を載せて、次のように記している。
「下方を睥睨している様子で分かるようにリーダー格と思われる。多数の群れを率いるだけにリーダー格には相当な強さが求められる。それが表情に表れているようである。」※百十五頁、十一行目〜十四行目、百十六頁、写真②

五、ゴイサギ
ゴイサギの求婚と、つがいの避難の様子が描かれている。
「急な災難に遭遇して咄嗟に夫婦が寄り添うのは人間だけではないことを改めて知らされる。」※百二十一頁、二十一行目〜二十二行目、百二十二頁〜百二十三頁、写真

六、ウグイス
囀りがオスのメスを惹きつけるための求愛によるものだと、初めて理解できた。写真が可愛らしかった。※百二十五頁、写真③、百二十六頁、写真⑩

七、おわりに
野鳥観察は外気の中、忍耐強く粘らなければ出来ないことである。興味深い野鳥観察記録を今回も読ませていただきながら、人間界にも通じる弱肉強食、親が粘り強く与える慈愛、冷静で狡猾な人間、夫婦の連帯、リーダー格に備わる堂々たる威厳など、興味深いテーマを教えていただいた。ありがとうございました。

2024.2.17克己 黎
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/25 19:11削除
野鳥の生態に疎い私にとっては、驚きの連続であった。著者の野鳥に対する愛情と、精密な観察眼が、読みやすく整理されている。素人がこのような感想を書くのは野暮というのだろう。
知らなかった野鳥の生態を知ったのは、喜びである。
楽しく読ませていただいた。
次作も期待している。ご健筆を。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 20:14削除
『野鳥おりおり(三)』感想

 健康のため戸塚〜大船間を歩くことがあるのですが、柏尾川には数々の野鳥が生息しているようです。鳥を狙ってカメラを持った方々をよく目にします。野鳥の生体については、私も素人ですので、新しい知識・発見をいただけたと思って読みました。

 克明な観察記録もさることながら、感心したのは写真です。鳥を驚かせないように望遠レンズで狙う。決定的瞬間を逃さずシャッターを切る。技術と忍耐のいる作業だと思います。

 であるが故に、その写真が白飛びしていたり、ややクオリティに難があるのは残念です。ご当人にも直接お話ししましたが、やはり、事前にカラー→グレースケール変換をした上でフォトレタッチソフトで加工・調整した方がよいのでは?

 さらに本同人誌はPDFの段階で、300dpiとなっているようですが、グレースケールの写真を掲載するのなら、600dpiで印刷すべきかと思います。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/9 09:44削除
今回も興味深く読ませていただきました。野鳥の生態に対する深い興味と観察眼は愛あってこそなのでしょうね。すばらしい記録だと思います。
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/9 13:32削除
野鳥おりおり
野鳥の観察などしたことがなくとも、その大変さは想像できます。その忍耐と強い意志には、ひたすら敬意を覚えるのみです。家の庭にも気をつけて見ると、シジュウカラやメジロなどが飛んできます。けっこう都会でも豊かにたくましく生きているのだと感動すら覚えます。アライグマやハクビシンもいますが。
作者は映画にも造詣が深く絵もよく描かれていて、その多才さに驚かせられています。その行動力や気力のパワーを少し分けて欲しいです。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/15 14:51削除
野鳥の生態を観察する作者の眼が、無意識に対象を擬人化していると思いました。卵生と胎生の違いはあっても、野鳥は人間と同じ恒温動物です。ぬくもりのある親子関係を育み、求愛行動をとるようです。例えば下記のとおり。

(1)子育てするカイツブリの親。五羽の雛がいつのまにか(おそらく捕食者によって)三羽になってしまう自然界の厳しさ。
(2)ターゲット(ザリガニ)をロックオンしたスナイパーのようなダイサギのクールさ。
(3)メスへ健気に求愛するゴイサギのオス。同じ男性として身につまされます。

 本作は自然を観察したノンフィクションではありますが、作者の視点が野鳥の行動をある意図をもって切りとり読者にわかりやすく提供している点で、作者の紡ぎ出した物語ともいえます。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:23削除
よく観察してますね。
 でも、この分野は映像の方がいいかなぁ。
匿名さん (90kuq21b)2024/3/15 23:13削除
野鳥おりおり 感想 藤野燦太郎
今回のエピソードの中では「ダイサギの真冬のザリガニ獲り」に興味を持った。
あんな大きなザリガニを丸呑みして、消化できるのかと心配になる。鳥類は歯がないので、前胃で消化酵素と混ぜ合わせ、次の筋胃ですりつぶすとか、歯を持つ哺乳類とは消化の仕方が全く違うようだ。しかし、動物病院では、いろいろなものを飲み込んで消化できなくなって運び込まれる動物があるという。それを細い内視鏡で取り出すらしいが、靴下、ビニール、巨大な骨など、いろいろな場合があるようだ。自分は胃腸科の看板も掲げているので、どうしてもこんなことを深堀したくなる。このダイサギはこの池で狩りを行っており、時々ザリガニを食べているようなので、大丈夫だと思うが。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/16 21:38削除
カイツブリはいきなり水に潜って姿が見えなくなるところが面白い。
 ムクドリは、私の最寄り駅近辺でも大群で飛び回っていることがあって、そんな日の夕方には駅前公園の木々で、大騒ぎをしていることがよくあります。
 ウグイスの写真がよく撮れましたね。二、三年前までは私の住居付近でも囀っていたけれど、「声はすれども姿は見えず」で写真はおろか視認もできませんでした。一度、登山の折にウグイスの姿を見たことがありますが凄かった。体全体を奮わせながら、全身を振り絞って囀っている姿は、「生きる」ということの懸命さを見せつけられた思いがしました。

池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 19:19削除
身近な自然の観察報告。<ダイサギの一連の行為には狡賢いまでに冷徹さを感じさせられたが、それと同時に、全て理に適っており、何一つとして無駄と思われる動作はなかった>。自然に学ぶことは多い。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/4/1 17:42削除
篠田さんの野鳥愛が感じられる作品。どれも興味深かったが、特にダイサギとウグイスの下りが良かった。
私は去年、ダイサギかどうかわからないが、近くの公園の高い木の上に初めて白いサギを一羽見つけたことがあった。その美しさに見とれながらも、カメラを持っていなかったので撮影できなかった。翌日から何日も通ったが、ついにその白いサギを再度見つけることはできなかったのだ。
また、季節になると近くの公園でよくウグイスの大きく美しい声を聞く。だが、声はすれどもいくら探しても、その姿は木々に隠れてなかなか見ることができない。なので、白いサギとウグイスは私の中で幻の存在なのだ。(鳥恐怖症だけど)
野鳥愛ある篠田さんだからこそ、これだけ細かく観察できて書けるのだろう。写真を撮るための忍耐力もまた凄いと思った。
十河さん (934opo11)2024/4/3 05:53削除
・自然を観察して、写真を添えながら事実にものをいわせる書きぶりは好ましい。
・フィクションの間に読むと、客観的な叙述が多くをいうことに改めて気づかされた。
・野鳥にせまる落ちついた姿勢もよく、全体として好感がもてた。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/4/4 21:27削除
感情を抑えた飾らない描写文、写真から野鳥をこよなく愛で慈しんでおいでなのが伝わってくる。筆者の野鳥を追い観察する姿勢から、こうして時の流れに沿って真摯に対象を見つめなければ、何であれ物事の本質をみることも知ることもできないのだと感じた。
後記に記された、「無常観」「1年前に観られたことが…否、昨日観られたことが…今日は観られない」に消えていくものを写真や文で留めておくことの意義と筆者の思いの幾分かを理解できたように思う。
返信
返信14
管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:24 (No.1012815)削除
⑦『ポトフのつくりかた』 藤本珠美著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
藤本珠美さん (90lhn9dp)2024/1/30 10:08削除
1. 常に自分のなかに持っている、「傷を負った人たちは如何にゆるされるのか」というテーマがあり、それをフランスで知り合ったミシェルのありようをとおして、描こうとした。「第三章 白夜」の一本の線に文章全体を集約させたかった。
2. 狙いはまず、「第三章 白夜に」もってきたつもりである。
ただいつも考えていることとして、文章に突破口がほしい。
そのため文章の前後を、レシピで挟む方法をとった。
3. 20点くらいでしょうか・・・。
藤堂勝汰さん (910al88x)2024/2/9 19:35削除
『ポトフのつくりかた』 藤本珠美著を読んで

藤本さんの文章はいつ読んでもオシャレである。海外での様々な経験が藤本さん自身の生き方にそれなりに影響を与えており、それを文章に落とし込むことにより、オシャレな文章になるのだろうか?
到底自分には真似ができないと感じてしまう。
ポトフというフランスの伝統的な料理。フランス国民はこの料理に安心感と敬意を持っているのだと感じた。
フランスで知り合ったミッシェルが作るポトフにはこだわりを感じる。主人公にあれやこれやとポトフに関して指示を与える興味深い男である。
フランスの白夜という境目の無い世界では暗闇の世界の終わりが見えない。
食への尊厳を忘れない小説であると感じた。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/17 19:29削除
『ポトフのつくりかた』を読んで 克己 黎

婦人雑誌掲載のエッセーのように、オシャレで、ノスタルジックで、美味しそうな随筆。

藤本さんの作品は毎回外国のエッセンスが散りばめられ、言葉の選び方もセンスにあふれている。感性豊かで、オシャレである。

今回も短い作品ながら、センスが良く、読後感も良かった。
次回の作品も楽しみである。
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/26 16:12削除
第一章で、作者はポトフに必要な食材を列記し、もうひとつ必要なものは何でしょうか、と謎をかける。
読者は答えを探して読み進める。
傷痕を癒そうとして訪ねた英国。フランスでの生きづらい人たちとの出会いと別れ。ミシェルとのジャガイモ論争と多様な味の記憶。傷痕は言えたのだろうか。
寮で一人作った粗末な夕食と夜遅くに調理人の提供してくれた食事、今も記憶に残っている。
ヒントは散りばめられているが、正解は明かされない。
最終章では、さまざまな食材のいろんな味を溶け合わせたポトフが出来上がる。
次は、読者がポトフを味わう番だ。読み終わった読者のポトフには「もうひとつ必要なもの」が溶け込んでいる。一人でしんみりと温まろうか。それとも、おおぜいでジャガイモ談義でもして楽しく味わおうか。そうだ、ワインは何を合わせよう。
作者のやさしさ、温かさ、そして少しの寂しさに心を寄せて、読ませていただきました。次作も期待しています。ご健筆を。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 20:28削除
『ポトフのつくりかた』感想

 フランスのお洒落な文化を解説した随筆として興味深く読ませていただきました。作者の実体験を踏まえた紀行文という側面もあるのでしょうか? どこか料理、味覚への愛が伝わってきそうなストーリーでした。

 ただ、フィクションと考えると、前後半のストーリー展開に、やや違和感があるのですが……。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/9 09:40削除
藤本さんの作品は、いつも独特な雰囲気を持っていてひきつけられます。海外で暮らし異国の友人たちと交わりながらも、作者は泥臭い生活者としての視点ではない、何か詩的なものが漂う場の中に身を置いている感じがするのは私の一方的な読み方なのでしょうか?
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/9 13:42削除
ポトフのつくりかた
ポトフを作る準備からそれを仕上げる過程の中に、さまざまな人生や思いを詰め込んでいる。ポトフは人生の色々な味が煮込まれている世界だ。作者の小さなフランス論といってもいいと思いました。特にフランスの貧困層の暮らしは、明るくて派手なパリのイメージの現実を垣間見せてもらえて面白かったです。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/15 14:47削除
前作『アナ』の舞台は英国でしたが、本作の舞台は作者が英国のつぎに滞在したフランス。同国の基本料理ポトフとその鍋を切り口にして、フランスという国、フランス人を描写しています。そこで暮らす作者が観察した同国の姿。「フランスは美しいのではなく、汚濁のなかに、時として美しさが通りすぎてゆくような国である」。こういった感覚は観光客には知り得ません。
 作者の料理に口をはさむ男ミシェルの話や作者が日本で寮生活した時代の調理人夫婦の話も印象的です。
 本作を読んだあるご婦人が、このレシピのとおりにポトフを料理してみる、と言っていました。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:25削除
フランスの内実を垣間見たようで面白かった。
池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 20:06削除
きれいなだけではないフランスで自炊する生活。料理は寂しさを紛らわせ、人と出会うきっかけになり、昔を思い出すよすがとなる。文中にポトフは「火にかけた鍋」だという語釈があり、人々をひきつけるキャンプファイアを連想した。
匿名さん (90kuq21b)2024/3/20 09:50削除
ポトフの作り方 感想 藤野燦太郎

日本を飛び出した作者はイギリスやフランスを旅し、そこで知り合った人々と鍋料理のことを取材している。そんなポトフ(フランス風煮込み料理)にまつわる思い出を並べたエッセイだった。材料、作り方まで詳しい。

しかし途中で、鍋は国家のメタファーに思え、その具はそこで暮らす様々な民族のように思えてきました。フランスはアラブ諸国やアフリカ諸国から来た人が多いし、イギリスではコートジボアール、ブルキナファソの人に会ったからだ。彼らはその国に溶け込み、その国を支えているからです。

作者が私費留学生だったからか、出会った人は中流以下の人々と思われます。
そんな人たちとの共通点は料理で、そこで作者は交流を深めていきます。彼らと料理談義や気持ちのやり取りをするうちに彼らがお国柄を作っていること、ポトフでいえば「いい味」を出しているといったことが読みとれました。

気になったのは、時代がいつのことか不明だったり、行ったり来たりしていることでした。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/3/20 21:51削除
藤本さんの作品を拝読するのは3作目。どの作品にも独特の不思議な魅力ある世界がある。この作品も独りごとのようにふんわりした回想のなかに、人間の食の起源、食文化、衝撃、人情が流れるようにかかれている。どこか音楽のように感じながら読んだ。文章、作品に自分らしさがあるのはとても素敵で強いことだと思う。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/26 11:25削除
フラミンゴは赤い藻を食べるから赤い色をしているとのこと ‥‥ 食は生命にとって、もっとも基本的なもの、基本的過ぎて見過ごされがち ‥‥ 作者は、その食を材料にして自分の世界を語っています。
 外国にはほとんど行ったことがない私にとっては、書かれていることのひとつひとつが珍しいです。生活感のあるはずの料理の話であるにもかかわらず、どちらかというと生活感を感じさせない、あっさりとした軽食のような随筆で、気持ちよく読了することができました。

十河さん (934opo11)2024/4/3 06:04削除
・若いころの、だから貧しいころの、フランスでの漂流の点描。
・アフリカなどからの流入者たちとともに、日々の生活に苦闘する姿は好ましく読めた。
・いくつかの思い出の場所でのことをデッサン風に書いてあるが、場所を一つに限定して深く掘りさげるという書き方もあるのでは。そうすればより興味ぶかい読み物になるのではと思った。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/4/3 19:00削除
様々な人種が住むフランス。若い頃の作者もそこに住み着いた。そのランダムな記憶を、ポトフ(煮込み鍋は雑多な人種の象徴か)のつくりかたに挟んで書いている。
この構成は工夫されている。だが、小説ではなくエッセイなので、読者としてよりわかりやすさを求めるには、つくりかたに挟まれた章は、日本から始まりイギリス、フランスという時系列でも良かったのではと思う。非常に興味深い内容なので、スッと入ってきて欲しかったのだが、時代が前後するのがちょっと分かりにくかった。
また、第二章で、「単に学生である私のような立場でも、まずこの国で生きるために言語を習得してもらうため、ほとんどすべての学費、住居費がフランス国籍のフランス人の税金からまかなわれている」という部分は、ちょっと理解しがたく、説明が欲しかった。
共同キッチンでのミシェルとのやりとりは、ああ、フランス人だなあ、と面白かった。あれこれ言いながら、ポトフを作っている場面が浮かんでくる。
全体に文章表現や書き方はいつもの藤本さんの詩的な味わいがあり、とても良かった。
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管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:20 (No.1012806)削除
③『フレンドシップカップ2012』 上条満著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
藤堂勝汰さん (8ywajz8f)2024/2/9 15:58削除
フレンドシップカップ2012(上条満さん)を読んで

今回の上条さんの作品のテーマは中国に競走馬(日本のサラブレッド)を輸出し、中国で競馬レースを開催しようと試みる話である。
恐らく、上条さんが実際に携われた経験が基になっているのであろう。
日本から中国に60頭もの馬を輸出する苦労、アクシデントが克明に描かれている。
またレース開催もすんなり行かず、尖閣諸島の領有権を巡って、対日感情が悪化する。
その中にあって、中国人の中にも主人公の上条さんの熱意や奮闘を評価し、友情に基づき国民感情に抗おうとする中国人の友情が描かれている。
言語が違うし、そもそも歴史や文化、過去の歴史問題も絡み、隣国、周辺国と円滑に進めることは困難であるという一般的常識は持ち合わせていても、それを何とか友好的に解決しようとする一個の人間が両国にいることも事実であり、それのおかげで均衡が保たれているのだと痛感した。
上条さんは非常にまじめな方である。小説にもそれが表れている。
個人的にはもうちょっと、砕けた笑える箇所を内包した小説も読んでみたいと思う。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/18 11:24削除
『フレンドシップカップ2012』を読んで 克己 黎

上条さんの中国レポートは、毎度さまざまな視点から日本と中国について、見識や、知り合った方々との親交を通しての所感などが、客観的で統計に基づきながら、熱く、温かみのあるまなざしで語られている。


前は香り米について論じられていたが、今回は競走馬について論じられている。

日本と中国は政治的な問題から、第一回『中日友好杯』(『中日友誼競馬節』)は中止となるが、

「これら関係者は誰もが、『中日友誼競馬節』が中止になった残念さと悔しさを皆で共有したい」※六十五頁、八行目〜九行目

と、集まり、

「勿忘九一八!」※六十六頁、五行目〜六行目

とスローガンが、貼られるなかでも、小王研究室長のように、勇気ある行動や発言をもって日中友好に尽力する人がいたことを述べている。※七十四頁、七十五頁前半

メッセージが強くあり、
「上条さん、これだけは忘れないで欲しい。中国と日本の政府がどんな関係になったとしても、私はあなたの友人です。(中略)
「謝謝!私たちは友人です!」
と私は答えただけで、あとは言葉にならなかった。」※七十七頁、十二行目〜下段三行目

と、述べられ、最後に国際競馬振興協会の理事長との話で、上条さんと理事長の日中関係への希望や日中関係の親睦への前向きな姿勢が伺えた。
※七十七頁、下段十二行目〜七十八頁

上条さんの中国語の歌を、「文横カラオケの集い」でお聞きしたことがあったが、もっと上条さんから日中親睦の話をお聞きしたいと感じた。

本作は素晴らしいメッセージ性にあふれた物語だった。

2024.2.18克己 黎
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/25 19:09削除
友好と対立の間で翻弄される両国のビジネス関係者たちの苦悩を描きと努力の果てにビジネスは頓挫するが、その過程で育まれた両国の関係者の熱い友情の物語。
経験に基づいたであろう記述はたいへん興味深く、最後まで一気に読むことができた。
難を言えば、大部分が地の文で構成されているためか、臨場感にかける印象を持った。白熱した台詞のやり取りを増やし、案件の成立に向けた苦労で緊迫する場面を盛り上げ、事態の急変による落ち窪みを深く設定すれば、友情を確認して感動する最後の場面が、もっと読者の心に刺さるものとなったのではないだろうか。
いずれにせよ、最後まで興味深く読むことができ、感謝している。私は、このようなテーマの作品が好きである。
なお、政治、経済、社会といったマクロな環境の変化が企業経営と、そこで働く人たちを翻弄する姿を描いた作品には、コダックをモデルにした「象の墓場(楡周平、光文社文庫)」が面白い。
次作も期待している。ご健筆を。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 20:06削除
『フレンドシップカップ2012』感想

 十年ほど前の日中関係、その内幕までもが克明に描かれている、のかな? 作者ご自身で経験されたことをベースにしたフィクションだとお見受けしました。事実の重みを感じさせる作品です。

 いっそのこと、ドキュメンタリーにしてしまってもいいのでは? とさえ思います。であるが故に、フィクションとしては少々冗長な印象を受けました。詳細な説明はあえて省略してストーリーを進め、スピード感出す工夫などはあってもよいかなと思います。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/8 15:44削除
この作品を読まなければ決して知ることの出来なかった中国での競馬開催に向けての競走馬の輸出にまつわる話はとても興味深く読ませていただきました。日本と中国資本主義国と共産主義国、国同士の関係は常に波乱含みです。私自身、中国関連のニュースを見て嫌な感情を持ってしまうことがありますが、お互い一人の人間として誠実に向き合って繋がっていくことの大切さを改めて心に刻みました。
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/8 16:19削除
フレンドシップカップ2012
 むかし、まだ痩せていた頃乗馬を少しやっていたことがあるので、馬が大好きです。あんなに神経質な生き物を貨物船で輸送するのは、さぞ大変なことだったろうと想像しました。この作品は小説というよりルポやノンフィクションに近く、貴重な資料的価値があるのではないでしょうか。
ただ競馬は、ジョッキーの差配ひとつでどうにでもなってしまう賭け事なので、国家の権力が独裁的に強い国で、公平さがどこまで保証されるのか少し疑問の残るところです。中国で本当に競馬が成り立つのでしょうか。
匿名さん (90kuq21b)2024/3/10 22:04削除
フレンドシップカップ2012 感想 藤野燦太郎

国際貿易に長年携わってこられた作者の回顧録として読みました。
国家間には難しい問題が次々と起こりますが、その中でも中国は過去の歴史もあって、1、2を争うほどです。数年前まで気軽に旅行できる国だったのに、今はスパイ罪で拘束されるかもしれないという不安さえあります。日本企業も多数が撤退し始めています。
作者はその様な中国との貿易に長年携わっていて、作者にしかわからないエピソードが多数披露され楽しく拝読しました。
政府同志は面子の張り合いで角突き合わせていますが、民間人はそうでもないことがよくわかります。
最後に作者の言いたいことが、胡さんとの会話に出てきました。
「中国と日本の政府がどんな関係になったとしても、私はあなたの友人です。たとえ、中国と日本の間でどんなことが起こったとしても、私はあなたの友人です」
そうです。これが大事なんですね。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/12 20:07削除
上条さんは『幺妹(ヤォメイ)』、『チュウタイチョーニカタナナカ』、そして本作と、一貫して日中協力、親善に努めた主人公(私)と中国の人たちとの交流を題材にしています。中国の農村事情、米作の技術協力と続き、今回は日本からのサラブレッド輸出や競馬システムの売り込みと、普通われわれが知ることのできない業界の実態をレポートしています。もちろん創作部分もあるでしょうが、多くは「私」の体験にもとづくノンフィクションのように読みました。2012年尖閣諸島の一件を機に硬化した日中関係のなかで、日本と中国双方に両国の友好関係持続を志す人たちがいることを知り、うれしくなります。
 本作には魅力的な人物が登場します。謎めいた富裕実業家 趙さんや日中親善に尽力する小王さんなどです。上条さんは中国女性を活きいきと描くのが巧みで、以前のヤォメイや今回の小王さんなどは、とくに印象に残りました。
 一点、小生の意見です。最後に胡さんと「私」が泣きながら握手をかわす場面があります。作中、胡さんの役職について詳細な説明がありますが、「私」と胡さんの間柄は、同い年で以前の飲み友達としか書いてありません。胡さんの役職説明は簡略化して、なにか「私」と胡さんの友情をしめすエピソードなどをくわえた方が、より感動が高まったのでは、と思いました。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:11削除
日中間で尖閣問題で揺れていた頃、日本から中国へサラブレッド馬の輸出にまつわる話で、面白く読みました。

 マスコミから受ける中国とは違う一面をも見せてくれ、政治の世界と民衆とは違うと改めて思いました。
中国と深く接していた作者でしか書けないと思うと同時に、中国の懐の深さを改めて思います。
印象に残る作でした。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/3/19 12:02削除
作者が一人一人の人物に、並々ならぬ敬意と熱い情をお持ちのなのが伝わってきた。それは、長く携わってこられたお仕事を通して培われたものと受け止めました。
中止になってしまった日中友好の競馬節は、尖閣諸島に起因する日中の数知れない様々な摩擦、軋轢の一つで、なんの知識もない私でもやるせない思いになった。
人物、競馬節開催までの経緯、両国の仕組みなど、説明が多く創作というより、業務報告か新聞記事のようだと思った。
池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 18:03削除
日中関係は何かあるとたちまち緊張する。政治家の決定や歴史的記念日などに細心の注意を払う必要がある。国の動きに翻弄されながらも友情を大事にする関係者の努力に頭が下がる。タイトルは競馬大会の名称(の英訳)だが、日中双方の希望も反映させている。競馬システムの国際比較や馬の搬送方法、金持ち中国人の暮らしぶりなどディテールも非常に興味深い。
十河さん (934opo11)2024/4/3 06:06削除
・日中の一般市民間のコツコツとつみ重ねた友好も国家間のつな引きですぐにダメになってしまう。が、それにもめげない市民レベルの友情は好ましく、心あたたまる。
・抑制した筆致で淡々と事実を記述するという物語のつくりかたが、感動を――特に最後の感動を――うむ。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/4/3 18:06削除
記述や描写が細かくて、まさしくドキュメンタリーとして受け取った。
中国での競馬、フレンドシップカップを前にして、日本産サラブレッド輸出という大きな仕事があったこと、それにまつわる雑事や苦労など、これまで聞いたことのない内容を興味深く読んだ。実体験した人にしか書けないものと感じる。それゆえに、多少創作は加わっていても、ドキュメンタリーもしくはノンフィクションというジャンルでもいいのでは、と思った。
現地の人達との交流も暖かく描かれていて良かった。
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管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:22 (No.1012811)削除
⑤『喪失』 髙木青流著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
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藤堂勝汰さん (910al88x)2024/2/9 18:47削除
喪失(高木青流さん)を読んで
深夜の闇の中で働く思考というのは、時に大胆に現実を超越した物を浮かび上がらせたりする。
高木さんのこの小説は正に深淵なる闇にふっと聞こえるもう一人の自分自身なのではないだろうか?
思考だけが一人歩きを始め、自分を置いてけぼりにしていく感覚みたいな心象小説だと感じた。
お母さんというのが何を象徴しているものなのか分かるようなわからないような感覚が残った。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/17 19:53削除
『喪失』を読んで 克己 黎

読んでいて、芥川龍之介の『歯車』を思い出した。

『喪失』のなかの「ピアノ」は何の象徴で、また「おかあさん」は何者なのか。心理学や精神病理学で分析したらきっとわかるのだろうと思うが、推察するに、「ピアノ」は幼少期に縛られていた義務の象徴、「おかあさん」は縛っていた母親や祖母などの幻影かと感じた。

あくまで私の読後感を述べたまでである。

2024.2.17克己黎
由宇(ふくしま)さん (90o5adff)2024/2/24 08:54削除
~死者との対話~

東日本大震災にて、突然の喪失に際した人を対象に
臨床調査したエビデンスが存在します。

遺族の多くが、「喪失した対象」となんらかの対話を体験している。
そして、その事により、次の歩みへの動機になっている、、という調査です。

file:///C:/Users/alpha/Downloads/rss-n9pp129-147.pdf

本作はそれに近い体験を記録したものだと感じました。
大変リアルで、アンニュイで素直な気持ちが率直に記録、表現されていて、爽やかでした。

ラストの示唆も象徴的です。

貴重な文献だと思います。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/2/25 17:06削除
「青流」であおる、素敵なペンネームですね。後半の空のシーンに「青流」の文字が重なりました。
深い深い心象風景なのでしょうか。わたしにはその世界を感じることも理解することも難しかったです。
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/26 10:25削除
主人公は男性ですね。夢として描かれた心象風景は何を象徴しているのでしょうか。夢の中で、母は物静かな声で語りかけます、「返して」と。母は、生前何を与え、死後になって何を返して欲しいのでしょう。主人公は、母が返してほしいものは何だと思ったのでしょう。
夢の中で、母はときに「見覚えのない女」として現れますが、主人公は「お母さん」と呼びかけます。主人公にとって、どのような母だったのでしょうか。愛してほしいと思いながらも、必ずしも報いてくれなかった母でしょうか。
母が返してほしいと言い、主人公が差し出したものは、何でしょう。物語の中では明示されていません。二つの解釈が可能でした。
一つ目は、「母の主人公への愛、主人公の母への思慕」を返し、主人公は大人としてこれからの人生を歩むこと。もう一つは、主人公は臨終の間際にいて、母に命を返そうとしていること。もう少しわかりやすく表現されればよかったのでは、と思います。
次作に期待しています。ご健筆を。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 20:23削除
『喪失』感想

 この種の小説はあまり読んだことがないのですが、とても印象的なストーリーで、興味深く読ませていただきました。

 結果論ではあるのですが、夢オチのエンディングに読めてしまいます。せっかく、シュールを志向しているのですから、それこそ『アンダルシアの犬』くらい、思い切った不条理さを全面に出してもよかったのでは? と思いました。
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/9 13:20削除
喪失
“昨夜の寝入る時間を思い出せ」「一本線の音」など、詩的表現のうまさを感じました。言葉が鋭く吟味されていて、それが一枚の絵画のように散りばめられているという印象です。ただ構成や展開に今ひとつついていけず、結局病床のうつつの中でお母さんが迎えに来たというふうにも受け取れ、これですべて終わるのは“死”を連想させました。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/10 21:00削除
長い詩を読んでいるようでした。次々と鋭い言葉が現れて、その言葉によるイメージは呼び起こされるのですが、それを追っていく先に何があるのか分からないまま読み終えました。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/12 19:59削除
幻想的な散文詩か、梶井基次郎の小品のようにも読めます。作者は聴覚が研ぎ澄まされているのでしょう、闇の中からさまざまな音が聞えてきます。電話の呼び出し音、ピアノの音色、用水路の水音、遠くからは落としたコップの割れる音……。
 精神の不安を抱えているらしい「私」が、夢のような世界で繰り返す「お母さん」という言葉。フロイトによると、心の平安を願うひとが潜在的に求めるものは、母の胎(子宮への回帰)と死(ニルヴァーナ。涅槃)だといいます。この作品が暗示するものもこの二つなのでしょうか。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:20削除
何かが失われていくイメージなのだろうか?

母さんが私に与えてしまったもの、とはなんだろう。

当方には判りませんでした。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/16 21:41削除
(p.98 下l.8) 「一直線の音」 ‥‥ この表現、いいですね。また(p.101 下l.3~4)「この道はね、こう見えて実は、空に垂直に伸びているのですよ、お母さん――」‥‥ この言葉はダリの絵をみているようで、まさにシュールレアリスムです。
 よくわからないところがたくさんありますが、夢ならばそれは当然のことですね。シュールレアリスム小説というのは聞いたことがないけれど、もしあるとすれば、この作品はそれに該当するのでしょう。本作は、静かな中に不思議な雰囲気を漂わせています。高木さんの他の作品も読んでみたいと思いました。

池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 19:17削除
母親との関係が悪かったのだろう。夢かうつつの状態で、幻影のように母親らしい女が現れるのは、和解したいという深層心理の働きによるのかなと想像した。
十河さん (934opo11)2024/4/3 06:05削除
・心象風景をつづるポエティカルな作品で、さまざまな読みとりをゆるす。
・具体性に欠け、小説よりは詩にした方がよかったかもと思った。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/4/3 17:46削除
一つ一つの表現は独特で綺麗で、詩的な印象を受けた。が、言葉にどこかぎこちなさも残り、散文詩のようでもある。ここにもう少しストーリー性が加われば、心象小説として、より読みやすいものになるのではないか。
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管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:29 (No.1012826)削除
⑪『セルブズ』 原りんり著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
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藤堂勝汰さん (910al88x)2024/2/13 22:29削除
原りんりさん セルブズを読んで

今回の原さんの作品も突き抜けていた。
僕が読んでまず感じたのは、札幌ススキノの首切り落とし事件の犯人の女とダブった事だ。これから彼女の精神鑑定の結果が出て、責任能力があるのか否かが判断されると思うが、きっとこの作品の主人公も裁判では責任能力が問えないという結果になるのだろうと推測される。
また、作品のドロドロした猟奇的な雰囲気は、村上龍のインザ•ミソスープを僕に思い出させた。主人公の混乱し、凶暴になっていく様は読者に息をも付かせない迫力があった。
さすがの書き手である。
前作同様、この手の内なる狂気や、悍ましい暴挙、またその表現は、他の作品を圧倒していると感じた。
他の人も感じたかもしれないが、前作も今作も人種差別的表現が多数出て来ており、ややもすると様々な団体から避難を浴びるという危険性も考えられなくも無いが、それを文学という形で行間から表現できている為、自分は何ら心配していない。
由宇さんには是非とも原さんのこの作品を参考にしていただきたいと思う。
きっと由宇さんの中で描きたかった晶は、セルブズの「私」の様な存在だったのでは無いだろうか?
施設の人間や心理師のコメントに終始するのではなく、晶その者に言わせたり、行動させる事ができれば、読者はいやが上でもついてくる。

いずれにしても、原さんのセルブズは、悍ましくも内なる無意識の自我に翻弄される主人公を力ずくて納得される筆力を備えた力作である事に間違いはない。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/18 00:00削除
『セルブズ』を読んで 克己 黎

強迫性障害、あるいは多重人格障害を扱った作品で、主人公日向子が、実の母を殺してしまったという結末になる。

ひまわりの花柄の黄色いワンピースが、吐き気を後半引き起こす起因となる。

言葉づかいの粗さやきわどい描写があったが、主人公の危うい脆さは十分に伝わった。いっきに読ませる筆力はさすがである。

誰しも娘にとって母親には感謝もすれば同性ながら憎しむ時もある。

私にとっては母は思春期の時にかなり反発をした相手のため、母が老いた今は、反発した時のつぐないをしたいと日々思っているところである。母親には満足して余生を味わってほしいと心底感じている。

2024.2.18克己 黎
由宇(ふくしま)さん (90o5adff)2024/2/20 20:54削除
題名、技あり! 秀逸ですね。読後にセルブズを反芻すると
不気味さが倍増してきます。

いくつかある意味の中で「いい子」という意味もあり、
もともとはラテン語のservusは「あなたのしもべ」という意味でもあるのですね。

著者に題名について、聞いてみたい、です。

さて、55号には精神病理を題材にした作品が3作品もあります。
『本作品』、「ランナー24」、あと(併)並列するのは僭越無礼きわまりないのですが
「48時間」。

時代背景なのでしょう。

私事ですが、精神病理業界の端くれにおりまして、仲間に3作品を読み比べて
いただきました。

ついては、本作のことを専門家輩は、皆、異口同音に「すごい」「(精神科)医師さん!?が書いたの?」との感想です。
解離性障害を描いたものだと感じてます。(もし違ってたらご容赦ください)

さて(私は)精神疾患は決して、一般の方が思うような複雑怪奇なものでなく非常に
シンプルなものであり、「不条理を処理しきれないときにおこる、脳のバグ」と捉える臨床スタンスです。

著者様は、おそらく、この解離性症状についてかなりの時間取材されたか、勉強を重ね、洞察をくりかえしたのだと感じます。敬服します。

私自身に解離の経験がないため、「リアリテイ」にこだわると、そこに寄り添う者の
言葉にしか、真実が描けません、またほかの病気者もまた然りです・・・

∴私は当事者を描く事にふみきる、には絶望を感じております。
(克己様のご指摘は、誠にささりました、感謝します、ただ本人の心理には至れない
 とういうか、自分が避けているのは自覚しています、ごめんなさい)

感想にもどります。

解離性障害(多重人格)は簡単に言えば「窮鼠猫をかむ」「火事場のバカ力」という学説が主流です。つまり
『生命もしくは生命が脅かされるかのような危機に遭遇したとき、あたかも自身(セルフ)とは異なる人格のものが代行して痛みを引き受けるように、脳が別人格を創造し、緊急避難する症状』という事です。
(これを応用してできた次世代治療こそ「マインドフルネス」です。ちなみに私の専門です)

狩猟時代は獣にかみ殺されるなんて経験は日常的でしたので、ひたひたと食い殺される
苦しみから逃れるために、身に着けたホモサピエンスの脳力のひとつです。

現代は獣を人間が支配してしまったものの、脳にはその緊急避難の脳力が備わったままなので、仮想の敵を創り出してしまう時代なんです~。

前置きが長くなりました。

本作には、実にその辺、仮想の敵をつくりだしてしまう過程が見事に表現されていたと感じます。

現代は人とのかかわりが希薄です。そこで敵を創ると近親者に目がいってしまう。濃厚な人間関係が近親者以外に存在しない、現代。実は危険なんです。

本作にはその、警鐘役割を果しているとも感じました。

圧巻です、次回の心理作も読みたいです。ありがとうございました。

追記
「ランナー」と比較させていただく無礼をご容赦ください。
クレプトマニアを主軸に置いてるにもかかわらず、対する取材、知識の造詣(勉強)が比して、圧倒的に少ないのではないかと、拝察します。リアリテイが希薄です。(失礼ながら臨床仲間も同意見でした)生意気ですみませんです。
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/25 19:07削除
描写力がすごい。主人公になりきって、「私」と「あたし」の入れ替わり、区別できない現実と妄想。そして思念の流れと区別しがたい他人の会話。
通常は禁じ手とされる視点の移動と鉤括弧なしの台詞は読者を混乱に落とし込む。これは難点であるが、じっくりと読み返せば主人公の思念と知覚の再現に高い効果をあげていることに得心する。読者は、主人公になりきって思念を追体験することができる。
一読では読解しづらい作品であり、二度、三度読んで初めて作品の真髄に触れることができる。
クライマックスの緊迫感ある母親殺しと死後処理の妄想場面は圧巻であり、読んでいてグイグイと作品の世界に引き込まれた。
次作も期待している。ご健筆を。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 20:04削除
『セルブズ』感想

 デカダンス的な雰囲気を志向されているのでしょうか? 意欲的な作品、楽しく読ませていただきました。

 ただ、少々、奇を衒良過ぎているのでは? と思います。二重人格という設定ですので、主語を「私」と「あたし」に分けていらっしゃいますが、人格が変わったか否かが判然としません。

 下品な言葉も、やり過ぎで、あざとさが出ています。

 せっかくの面白い作品ですから、読まれること、読者目線を意識された方がよいのではないか? と思いました。

 あくまで私の主観では……、ということですので、ご無礼お許しください。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/13 15:05削除
この作品に出てくる登場人物のリアリティーがすごいですね。『私』が錯乱状態になって母親を殺してしまう場面の描写も読者をその世界に引きずり込んでいく筆力に感服しました。そして殺してしまった後で、「卵焼きはお出汁のきいた厚焼きでなくてはならなかったし、お魚は銀ダラの西京漬けがいいし…」という一文があることも、母との関係性に奥行きを持たせていると感じました。ただ、毎日娘にこんな手をかけた美味しいお弁当を作り、また夏休みにはビジネスクラスで海外旅行のできる経済的にもゆとりのある母親と、精神的に娘を追い詰めてしまう母親像とが私の中で上手く溶け合わず違和感として残りました。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/15 14:37削除
前作『底澄み』も本作『セルブズ』も、原さんの作品に共通して感じるのは、対象を見る「作家の眼」です。二作とも女主人公が一人称で語るスタイルなので、描かれるのは主人公の視点から見た世界です。しかしそこには作家としての原さんの眼、綺麗ごとではない、汚れたもの、屈折したもの、どろどろしたもの、それらを容赦なく描きだす眼を感じます。そして人物を太い輪郭線でずばりと表現する思い切りのよさ(たとえば井坂は「小指のない男」、中年女は「歯のないデブ女」など)。『坊ちゃん』が登場人物につける「あだ名」(狸、うらなり、赤シャツなど)を思い出しますが、本作ではもっと辛辣です。作者の腕っぷしに驚かされます。
 さて、本作について。主人公日向子は自分が二重人格との自覚はありますが、そうなった原因は母親による過度の干渉と押しつけ、無理解、要するに母親による虐待であると思い込んでいます。自分の責任ではないと自分に言い聞かせているわけです。したがって、自分の軽率な行動や幻覚を異常なことと認識しながらも、内省することはありません。おそらく母親にはまったく別の言い分があるのでしょうが、二人の思いは歩みよらず、これがこの母娘の悲劇です。
 作品の最後で日向子は母親を亡き者にしてしまいます。日向子にとって母親は「世間体、優等生的なふるまい、モラル」などを象徴する存在で、反撥の対象でした。しかし一方で、自分がこうなった責任を転嫁できる唯一の相手でもありました。その存在を排除してしまった先に待っているのは、救いのない孤独ではないでしょうか。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:39削除
二重人格をテーマにした作品として読みました。
医学の分野では多くの進歩が見られますが、精神医療の分野ではまだまだ判らない領域も多いと聞いています。
だいぶ前、NHKテレビで「精神病の二重人格」に関する番組を観ました。

番組では「二重人格」の症状や原因の究明行われていて、原因を突き止めるのは精神科医でも面倒で困難、との内容だったと思います。

 「二重人格」とは小さい頃のなんらかの衝撃なり体験なりが、それが成長した本人の意識に影響を与えて、何らかの精神障害症状(例えば、正常な人間関係を築くのが困難、とか)を齎す、と言う雑駁な認識しか持っていませんが、このような病状に正面から取り組んだ小説は初めて読みました。

 この小説では主人公の私が、ネットで調べて「自分は二重人格」である、とそれなりの認識を持っているのは救いでもありますが、その原因は小説の内容から、どうやら母親にある、とはなんとも痛ましい事です。
母親としてのしつけや教育方針もあり、それと言うのも子を思っての事。しかし子供を無視してそれが強すぎると虐待・・・。

 幼い頃の衝撃とは、虐待、性被害、いじめ被害。等が言われています。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/16 21:32削除
私の個人的な意見ですが、原さんは小説家として既に一流だと思います。昨年の『底澄み ‥‥ 』もそうだったけれど、筆力が違う。『底澄み ‥‥ 』は、初めから終わりまでずっと盛り上がっていたと思うけれど、今回の『セルブズ』は物語の流れに変化があり、その盛り上がり・盛り下がりの変化に沿って、それぞれにふさわしい筆致で描き分けられていると思いました。
 バッドエンドは私自身も嫌いな方ではないけれど、ただ両作品とも結末が悲惨すぎるのではないかと思った。こんなに悲惨にする必要があるのかな ‥‥ 結末をもう少しラフなものにすると、読むほうもより気楽に読める。小説は「娯楽」という面も大きいので、そちらにも配慮してもらえるといいのではないかと思った。
 人に勧められて芥川賞作品というものを読んでみたこともあったけれど、何とつまらないこと ‥‥ 原さんの物語の方がよほど面白いです ‥‥ 原さんの作品の方が上ですよ、私はそう思いました(個人の感想です)。

匿名さん (90kuq21b)2024/3/18 22:36削除
セルブズ 感想 藤野燦太郎

小児期、思春期に母親が娘の食べ物から服に至るまでを勝手に一人で決め、また娘に愚痴を垂れ流し、嫌がらせを繰り返していた。そんな虐待の結果、主人公は解離性障害となった。そしてある日娘は母親を殺した。
「私」と「あたし」を解離のたびに文章を分けてあり、解離のテキストのように整然と並べてありました。よく研究されていると思いました。
少し気になった点ですが、解離性同一性障害になるには激しい体験があったほうが説明付きやすいと思いました。日向子の場合は、「食べ物や服の趣味や進路まで特に父親が死んでからはほとんど一人で決めていた」とか、「料理教室の愚痴」とかの説明では少し弱いのではと思いました。
自分だったら小説なので読者がある程度納得する内容、性的虐待、学校での激しいいじめ、母親による教育虐待(よい点数を取れなかった時に熱湯をかけられたとか)などの思い出シーンを、2つほど挿入したかもしれません。勝手な意見ですみません。
池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 18:44削除
経済的に豊かな家庭でお嬢様として育った主人公。父親が亡くなったこともあり母親の強い影響下にある。母親は料理教室を主催する社会的成功者でもあり、主人公は教師というリーダーシップが必要な職に就いて母親の成功モデルを追おうとするが、生徒の反抗に手を焼き退職を余儀なくされ、自らの進むべき道を見失ってしまう。

 二重人格というモチーフは、母親によって押しつけられた「理想の姿」と、自分で勝ち取るべき「本来の生き方」に引き裂かれた主人公の苦しみを表しているのだろう。成功者である親がその成功を子にも期待するのは無理もないが、子にとっては重荷になることもある。親は親、子は子。そんな当たり前のことを忘れないようにしたいと思った。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/3/24 21:29削除
むずかしい個の精神世界を書いている。
文章、言葉がとても強気だと感じる。そうでなければとても描くことのできない題材だかからだと思った。ただ、精神の移動、変化(…というのだろうか)にそって辛らつな表現と、そうでない表現を書き分けた方が主人公の症状が際立ち、読者をもっとつかむのではないかと思う。
原さんの気概を感じる。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/3/26 17:34削除
多重人格を扱った、原さん独自の世界観が溢れる作品。
灼熱の海岸での汗したたるゴミ拾いの仕事や、一緒に働く個性ある人たち一人一人の描写がリアルだ。老婆、デブ女、色気のある中年女、元テニスコーチなど名前が無いのは、主人公にとって意味のない記号にすぎないからか。朝宮麗美と井坂さんを別にして。
それでいて、人格が入れ替わる時の表現がまた秀逸。「あたしはのびをするように日向子さんのリンパ液に乗って全身へなだれ込んだんだ。」は面白い。
母親の死体を埋めて土で固めたバスタブにお花を飾ったのは、主人公のせめてもの潜在的な気持ちの表れか。その意識は海岸に埋めた腐った猫や魚の死体へとつながっていく。
静かな病院でのラストシーン、漂う炊き上がるお米の匂いは、微かな希望を感じさせた。原さんは五感を刺激する表現が上手い。
私が昔観たドラマでは、亡くなった祖父の棺の中の死に顔を最後に見るように言われた幼女が、そのショックから多重人格を引き起こす。とてもショッキングだったので、よく覚えている。
多重人格になったきっかけが、美味しいお弁当を作ってくれるがヒステリックでプライドの高い母親の存在だけでは少し弱い気もした。この小説には父親が出てこないが、それにからんだもっと深い記憶があっても良かったのではと思った。
とは言え、去年のものより今年の小説は更に凄みを増した感がある。レベチである。
十河さん (934opo11)2024/4/3 06:03削除
・不機嫌で不安な現代人の心情を、うまくすくいあげていると思った。
・多くを説明しない、即物的な書きぶりが生きている。
・江の島近辺にはすでにでき上ったイメージがある。それとは相いれないような作品空間なので、他の場所あるいは架空の場所がよかったかと思った。
返信
返信14
管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:21 (No.1012810)削除
④『看板娘』 上終結城著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
上終結城さん (90mdbym0)2024/1/31 00:55削除
1.創作意図、狙い
 前作(第一作。第五十四号掲載『そのとき現れたものたち』)につづき、1979年頃の京都が主な舞台です。再び登場する下宿学生の悠介は、今回は主人公ではなく、基本は狂言回しなのですが、結果としてキューピッドの役も演じることになります。
 前作では、短い作品にもかかわらず、多くの要素(ストーリーにとって枝葉的なエピソードなど)を入れすぎた気もします。それで今回は、ひとりの女性(絢)の姿にしぼって話を展開してみました。題材が、嫁姑や家柄問題など、われながら古風すぎるとは思いますが、約四十年前の物語だとご理解ください。作品のある部分には、私自身の体験が投影されています。作中の女性が話す京ことばは、京都で育った知人女性に添削してもらいました。

2.完成度
 第一作にくらべると、書くことに少しずつ慣れてきた気はします。が、依然として、文章でなにかを表現する難しさを痛感する毎日です。今回のストーリーは、前作よりは無理のない流れにできたかな、と思います。
藤堂勝汰さん (8ywajz8f)2024/2/9 14:05削除
京都のお好み屋の娘と大学研究生との恋愛。
どちらかというと不器用で勉強一筋の武上正博としっかり者の絢は、正博の猛烈なアタックによって付き合い始める。
だが、結婚の段階になると、正博側の実家の抵抗に合い、駈落ち同然に結婚を強行する。
その為、夫の両親からは絶縁状態となる。正博の父が亡くなり、一人残された信子も病気がちになる。孫の肇が生まれて軟化する。最後信子の亡霊?が現れ、絢に子育ての注意をして亡くなる。
信子は家を守るが為に厳しく接して来たのであった。
ストーリーはわかりやすく、起承転結もできている。
心情がよく出ているが、ありきたりなストーリー展開の感は否めない。
昔の家制度、家柄を重んじる風習はそれがある意味当たり前であったとなんとなく推測される。
ストーリーとしては、もう一捻りあった方が良いと感じる。
前作は谷崎潤一郎の亡霊みたいなものが出て来て面白かった。
何でもかんでも著名人や亡霊を出すのは反則技であるが、読者がふっと笑ってしまったり、意外なセリフがあっても良いと思う。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/18 19:03削除
『看板娘』を読んで 克己 黎

上終さんの「京都シリーズ」第二弾。お好み焼き屋の看板娘・矢作絢と名家の大学院生、武上正博との恋と結婚、嫁姑問題。

さらっとした文体で読みやすかったが、あまり心に響かなかった。絢の人物像に興味をひかれなかったのと、武上家や信子の考え方が時代錯誤な気がして、ひと昔前と、感じたのである。

また、絢と正博との恋愛の過程も綿密に描かれていないため、さらっとした印象で、あまり現実味がなかった。

しかし、恋は突然落ちるものだし、唐突に進むものだから、まあ、勢いにまかせていつのまにか結ばれた、という人もいるかもしれない。

私はまだ人生のひだを重ねていないため、この小説の奥深さを知るには、まだ浅すぎたのかもしれない。

もう少し歳を重ねて経験を積めば、この作品の深淵さを感じられることと思う。

2024.2.18克己 黎
由宇(ふくしま)さん (90o5adff)2024/2/24 09:33削除
~うるっときました~

ラスト、目が潤いました。「言葉を継いで挨拶をしめくくった。嗚咽はまだ続いていた」
参列者に滞りを見せまいと気丈にふるまう、喪主の思いを超えて、場は感動にむせびなく。

いいですね~、情感が手に取るように伝わってきます。

上終さんの端々のさらっとした表現の中に、(おそらく文豪から学んだのでしょうか)
情感のひだをくすぐられます。

ラスト以外でも、特に好きなのは94p
「こどもなりにどこまで悪さをしたら、叱られるか、…試しているようだった」

大人からは丸見えの子供の情感を、見守る昭和の残影。。大人がおとなでこどもがこどもである事を許された時代。
を垣間見えます。

信子と綾子 

時代を世代を超えて、継がれる、大人の役割。

信子が綾子と対面したときの本音の心情は、「おめでとう!」だったのでしょうか。。。


前半、もしかしたら、悠介と絢が密会するのかなあああと妄想しましたが、読了してそんな自分を、恥じました(^^♪

悠介は上終さんかな? お聞きしたいです。
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/25 19:05削除
古き良き京都の情緒と、静かな福井の風情が物語全体の通奏低音となって、落ち着いた空気を醸し出している。抑揚を抑えて描かれた恋の物語は、この空気に馴染んでいる。
読後に、軒端の風鈴のような余韻を感じさせる、いい物語だと感じた。同じ頃に過ごした京都の街並みを思い出して、しんみりさせられた。
私は、この物語の空気が好きである。
次作を期待している。ご健筆を。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 19:57削除
『看板娘』感想

 京都の街の風情と味のある空気感、これを出せるのは作者の才能だと思います。関西出身者でしか分からない? ような独特の雰囲気を持つよい作品だと思います。お好み焼き屋とかね……。

 一点気になるのはラスト近くで「生き霊?」が出てくるシーン。少々唐突な感じがしました。私が、文学作品を理解していないのかもしれませんが、ファンタジー要素を入るのなら、事前予告、伏線があった方がよいと思いました。

 いずれにせよ、計画性をもって書いている私、自作について、無機質といいますか、整い過ぎたつまらなさを気にしております。そういう意味で、作者の才能にちょっと嫉妬しました。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/8 16:01削除
はんなりした京ことば、いいですね。文章がきれいで安心してスラスラ読み進み、作品の世界を楽しむことが出来ました。全体として作品の雰囲気が好きです。ただ、絢や信子の心情の描き方が物足りない気はしました。
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/8 16:39削除
原りんりさん (923tbrlg)NEW2024/3/8 16:37 (No.1101113)削除
看板娘
 矢作絢と武上正博のハッピーエンドのラブストーリーだと思いました。京都の宵山の雰囲気が背景となって、働き者の主人公看板娘絢さんや学者肌の武上正博さんの実直な人柄もよく描けていたと思います。ただ全体に平板で山がないので、印象の薄い作品になってしまった気がします。いわゆる“葛藤”というやつですか、なにか全体に上手く出来すぎで、読者を引きつけるポイントに欠けているように思います。お好み焼き屋の母子家庭に育った娘が、いわゆる地方の旧家に嫁に入るのにはそこそこ嫌なこともあったはずで、いっそのこと絢の一人称で持ち前のチャキチャキ感で乗り切っていく様を描いたほうがインパクトがあると思いました。冒頭の母親の人生から始まるのは不要のような気がします。
返信
匿名さん (90kuq21b)2024/3/10 01:11削除
看板娘 感想 藤野燦太郎
この作品は50年ほど前の京都が舞台であり、因習と差別が残る北陸地方出身の男と当時現代的な京都の娘との恋愛を上手に描いていました。
ですが、どこかで聞いたような話だと思った人が多いと思います。
しかし自分は特別な思いで読んでおりました。

旧加賀藩百万石の領地(福井、石川、富山)には京都や新潟との境に山や関所があり、封建制度、家の制度や因習が長く残りました。自分の大学病院外科では、医師と看護師の恋愛や結婚は禁じられていました。しかし男と女ですから、禁じられても踏み出してしまう者たちは結構いました。しかし多くは破局を迎えたわけです。
女親の中には「娘をだましたあの医者を殺してやる」と云って日本刀を引っ提げて医局へ乗り込んで来た男もいます。その若い医者は医局長から「二度と帰ってくるな」鉱山の診療所に送られました。当時こういう処分を我々は「島流し」と呼んでいました。自分が31歳のころには後輩が親の反対を押し切って看護師との結婚を強行、しかし母親からも父親からも「嫁とは絶対に認めない」と毎日のように電話があり、マンションに押しかけられたりして、1年後に心中するという無残なことになりました。しかも手首を結んだ二人が別々に葬られるという非情な結果になったのです。ここで初めて主任教授はマスコミの前で公式見解を求められ、医師と看護師の結婚を認めました。今から40年ほど前のことです。
今は新幹線も北陸を駆け抜けるようになり、寿司屋や割烹は銀座並みの値段となり、家や結婚に対する古い考えも吹き飛んで東京と全く同じになってしまいました。皆様の子供さんやお孫さんの結婚には何の障害もなくなっていますのでご心配なく。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:16削除
旧家に嫁いだ武上信子の存在感が印象に残るが、
この小説は武上正博とお好み焼き屋「矢作」の看板娘「絢」との恋物語。

物語りの設定は「忍ぶ川」を思わせ、青春小説として成功している。
時代なのか、このような小説は書きにくいのか、それとも当方の勉強不足なのか、こうした恋愛小説に接する機会は少ない。
恋愛物は小説の原点の一つなのだ。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/16 21:45削除
名家の御家存続という大命題に叶う結婚観と、現代の自由な家族観に基づく結婚観とが擦れあうドラマ ‥‥ そんな中で紡がれる、親子孫三世代に連なる愛と葛藤の物語。歴史ある名家の物語となると、変におどろおどろしいことを想像してしまうところもあるけれど、あっさりと美しく終わるところが心憎い小編ではないかと思いました。
 自分には全く関係のない世界ではあるけれど、歴史ある日本の社会では、いつもどこかで演じられているドラマなのだろうな、とも思いました。

池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 19:15削除
義母の「種より畠」というセリフがえぐい。こんな、家を守る使命感に満ちたゴッドマザーは、今も日本のどこかにいるのだろう(と書いているとき、安倍洋子氏死去のニュースに接した。岸信介の娘にして安倍晋三の母親。まさにザ・ゴッドマザーという風格だった。昭恵夫人は大変だったのではないか)。

 前号の「そのとき現れたものたち」に登場する悠介と園美が狂言回し役で再登板している。ストーリーに不可欠とは思わなかったが、シリーズ化の決意表明と受けとめた。前回、今回と京都の街並みや風習の描写が風情豊かで楽しいが、いずれは横浜に舞台を移すのだろうか。できれば京都の風情をもっと味わいたい。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/3/30 17:59削除
前回と同様に、関西地区を舞台として祭りなどの風物詩を取り込みながら、若い男女の恋愛や成長を描いている。上終さんの文章の特色なのか、京都の土地柄とともに、全体におっとりとしていて、品を感じさせる。登場人物は色々いるが、それぞれのキャラクター設定も考えられている。
ただ時代設定が分かりにくかった。絢の母の和代が大正13年生まれなのでそこで推測するのみ。初めは描写の多い和代が主人公かと思ったが、娘の絢だった。実際に舞台の時代が1979年と出てくるのは、第三章になってからなので、もっと早い方が良かったかなと思う。
それから恋愛らしいシーンもなく、絢が正博の親に会いに行ったのは、グラスの酒をぶちまけるほどはっきりした絢の性格からしてちょっと不思議。その後で初めてお互いの手に触れたとは。時代的にそんなものなのだろうか、いやいや、と疑問は残る。
前回は仏像を取り上げてミステリアスなムードを醸し出していたのだが、今回は最終章で昏睡状態になった信子の魂が、嫁と孫のところへと飛んで行って姿を現す。その強い思いとともに、最後に精進落としの場で明かされる信子のエピソードが、厳しいだけではない親としての無償の愛情を感じさせた。ただ、全体からして少し唐突感があるので、絢が霊感があるとか、ちょっとした伏線があった方が良かったかなと思った。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/3/30 22:14削除
淡々としたストーリーに、絢、正博、信子、和代…それぞれの心情をあわくグラデーションをかけて交差したような印象の作品。祇園祭、比叡山ドライヴなど、観光者ではない京都に住む人の落ち着いた楽しみ方が書かれていて、そこを楽しく読んだ。
「看板娘」とあるが、主人公は誰だったのだろう?絢でもあり、正博でもあり、信子でも、武上の家そのものでもあるように思えた。
十河さん (934opo11)2024/4/3 06:02削除
・家や血といったものが大きな問題として登場人物や読者にふりかかる。絢もやがて、その古いしがらみの中に入っていくような気配がある。
・因習のあらがいがたい大きな力に、意識するしないに関わらずくみ入れられていく哀しさがよく描かれている。
・物語の前半と後半がうまく連結していないような印象があった。
返信
返信15
管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:27 (No.1012820)削除
⑨『桜花 散りぬる風の名残かな』 里井雪著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/1/29 11:16削除
<創作意図について>

 本作は、私が「小説家になろう」に投稿した短編をリメイクしたものです。「なろう」に書く短編は、なぜか、切ないファンタジーが多いのですが、これは異色作、半村良『戦国自衛隊』のようなIF戦記ジャンルです。

 創作の切っ掛けは『荒野のコトブキ飛行隊』というアニメを見つつ、友人とレシプロ戦闘機の蘊蓄を語っていた時に「戦闘機知識を生かした何かを書いてみようか?」と思い立ちました。

https://kotobuki-anime.com

 書くからには、ネット検索レベルとはいえ、丹念に事実関係を確認した上で、史実はもちろん、技術的な内容についても、可能な限り正確に再現するようにしております。(ヒトラーの自殺次期へのコメントありがとうございました!)

 また、フィクションにおける「科学設定」は、ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』のような、精緻さを志向しています。(1)量子力学の「重ね合わせ」や「量子もつれ」をSFによくあるパラレルワールド設定に持ち込む(2)「革新的なエンジンが日本人の意識も変えること」の論拠をバタフライ効果に求めるーーかなり考えた「嘘」ですが、一般の方に通じたかどうか。

 (2)は突飛とお思いかもしれませんが、現代におけるAIの急速な進化は、ディープラーニングというたった一つの考え方によるものです。すなわちイノベーションとは? という発想です。

 ただ、ネタが専門的過ぎる点は私のウリですが、読者を選んでしまい、欠点でもあると感じております。

その他、

・章の切れ目が少々不自然かもしれません。「なろう」を原作としていますので、一話=約二千文字=五分程度で読める分量に分割した名残りです。

・小説に強い思想性を入れ込むのは好きではありません。「戦争」「日本人論」については、ちょっとした皮肉を匂わせる程度としています。

・冒頭のヒトラーは「ツカミ」です。この種の演出は常に心がけています。

・尺も短いですし、ライトノベルの常として、情景・心理描写は控えめですが、女性のお化粧については、キャラを立たせる意図で、敢えて細かく書いています。

・太平洋戦史は、ガダルカナルやアッツ島などが、どう改変されるかも書くべきかな? と思ったのですが、「戦史改変」がメインテーマではないという認識ですので、冗長さを避け省略しました。
由宇(ふくしま)さん (90o5adff)2024/2/1 06:45削除
『桜花 散りぬる風の名残かな』
=感想  

55号で最初に読ませていただきました。
題名だけを見た、先入観として、時代ものの恋愛かなと想像してました。

想像は秒でくずされ、待ち時間の20分ほどでアッという間に引き込まれ読了してしまいました!
力作、圧巻のサイエンスファンタジーですね!

共時性(時空を超えて思いがつながる)という点で
ユング理論にも触れるとワクワク感が止まらなくなる!と感じました。
(漫画『漂流教室』はそこ(共時性)を前面におしだしてますよね、よまれました?)

冒頭の『我が闘争』にはつかまれました。
壮大な歴史テーマに(読者を)連れていってくれる期待感が最初の数秒でふくらみます。
(流石です!)

現実的な視点の主人公の一人称で、難解な専門用語も違和感なく読み進めることができ、
また、技術論や史実には、専門空気感・信憑性といった重厚が見事に装飾されている感じです。

一読者が作品を読んで、(作品に)没入しすぎ(熱中するあまり)アレンジを加えたくなることはありますよね。

以下、里井作品の一ファンのざれごととして聞き流してくださいね。

『主人公が変えた史実(技術革新)を、本来はむすばればれなかったであろう恋人との成就に帰結する』
という視点はすばらしく、さわやかです。

もし、私なら、ふたりのこどもに、この、ひいじいちゃんの名前がつけられます。。。

ラストは近未来の戦争を止めた、技術者の英雄として、この名前がつらなる。。
なんていかがでしょう(^^♪

続編があるやも、しれませんね、期待します!!

堪能しました、ありがとうございます。

by 由宇(ふくしま)
藤堂勝汰さん (910al88x)2024/2/10 12:14削除
桜花 散りぬる風の名残かな 里井雪さん著を読んで

今回文学横浜の会に入会いただいて直ぐに投稿いただいた。
今回の文学横浜第55号は、比較的最近入会いただき、尚且つ積極的に掲載を希望されておられる方を中心に掲載させてもらった。
里井さんもなかなかの実力者である。
里井さん自身、「小説家になろう」というWEB小説に投稿されているので、小慣れた感じがした。
小説の内容はというと、曽祖父(戦時中)の戦闘機開発をひ孫である主人公が後押しし、歴史を若干であるが変えてしまうSFファンタジーである。
SFファンタジーというとなんでもありという非現実色が強くなりがちであるが、里井さんの小説は偏りが少ない。
大幅に歴史を変えない。
中途半端といえばそれまでだが、この位がちょうどいい気がする。
それは主人公の性格が関係している。
大きく変わりそうになると、それ以上変えたら大変な事になると自制心が働き、途中で現代技術の伝授を止める。
曽祖父もしつこく聞くこともなく、じゃあそれまでにしておきましょうとあっさり引き下がる。
また恋人美桜がなかなか上から目線のやり手で、主人公の気弱さが感じられる。
一昔前だと、だらしないとダメな烙印を押されがちなキャラクターであるか、現代ではかわいいとか褒め称されるのかもしれない。
いずれにしても、ストーリーとして完成されていると感じる。
 強いて難点を挙げるとすれば、「日本空軍」がなかった事をある程度説明した方が良かったかもという点である。
この辺を知らない読者はもしかすると、疑問が湧いたのかもしれないし、もっというなら軽く流されてしまったのかもしれない。せっかくの仕掛けが気づかれずにスルーされてしまったのでは? とも感じた次第である。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/18 20:49削除
『桜花 散りぬる風の名残かな』を読んで 克己 黎

紀貫之の古今和歌集「桜花 散りぬる風のなごりには 水なき空に波ぞ立ちける」からタイトルは発想されたかと、まずはタイトルを見て思った。

冒頭いきなりアドルフ・ヒトラー『わが闘争』の一文が引用されているので、ヒトラー関係の話かと思いきや、機械系の話だとわかる。

だとすると、アドルフ・ヒトラーの引用文は果たして意味があるだろうか。戦争の話なのだろうか、と読み進めた。


さて、この物語で気になった点を述べたい。

「だけど、やっぱりメカが好きなんだ。自動車のエンジン設計には心が躍る、ピョンピョンする、曽祖父が心血を注いだ航空機技術が今も脈々と息づいているのだから。」※百五十一頁、下段六行目〜九行目

「爺さんがこれを押入れの隅に仕舞った理由、分かった気がするよ、こんな日記、もう二度と読みたくなかったんだろうな、だけど、捨てるに忍びなかった、そんなところだと思う。」※百五十三頁、二行目〜五行目

「特に終戦直前の記述は読んでいてつらくなり、思わず日記を閉じてしまうこと、しばし。」※百五十三頁、六行目〜七行目

「あー、爺さん、タイムカプセルのつもりだったのかな? 封筒から白い便箋を取り出した、そこには、やはり几帳面なペンの文字。」※百五十五頁、十七行目〜下段一行目

「ところが、黒曜石の瞳に、オレンジのグラデアイとリップ、控えめにメイクをした可憐な女性は、まるでラノベヒロインのよう。」※百五十七頁、下段三行目〜五行目

「一目惚れバイアスとでも表現すればいいだろうか。」※百五十七頁、下段十四行目

「流れるような黒髪をかき上げる仕草にも、健康優良児の面影はない、大人な天使が僕の目の前に立っていた。」※百五十七頁、下段十四行目〜十六行目

「いやいや、自慢じゃないが、俺、彼女いない歴、イコール、年齢、を更新し続けてるんだけど」※百五十七頁、下段十七行目〜十八行目

「きれいに塗られた櫻貝のマニキュアから目が離せない、そっと身を寄せてきた彼女からは香水? 若い女性特有のラクトンが漂う。」※百六十一頁、下段十一行目〜十三行目

文章中、句読点、言葉の使い方、比喩などが、私はあまり読んだことがないタイプの作風のためか、読むのを何度かためらった。作中の言葉が軽いのである。

また、過去改変の流れであるが
「一九四五年八月、世界初の原子爆弾が東京に投下された」※百六十二頁、下段十四行目〜十五行目

とあるが、原子爆弾や戦争を小説に書くのにしては、被爆国である日本や被爆者の実際を軽視していないだろうか、と感じた。

私はラノベというものを読んだことがないし、読みたいとは思っていない。また歴史から学びこそすれ、歴史を軽視した話を創作したいとは思わない。

作者、里井さんのライトタッチな文章に読みにくさと、軽さを感じてしまった。

また、タイトルから想像される、紀貫之の古今和歌集短歌について、本文中に全然触れられていないのが、やたらと気になった。

2024.2.18克己 黎
追記、辛口ですみません。
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/25 19:17削除
ライトノベルはよくわかりません。この作品の感想を書くために、多くの人に読まれているというライトノベルを一作読みました。そして、純文学や歴史小説など既存ジャンルの文学とライトノベルの間には埋めがたい大きな溝がある、と感じました。ライトノベルは文学性を追求するものではないようです。しかし、多くの人に愛されているところをみると、何か人を惹きつける素晴らしさを内包しているのでしょう、それが何か私にはわかりませんが。
既存ジャンルの文学作品のつもりで感想を述べるのは的外れだと思いますので、あえて申しません。
ご健筆を。
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/9 18:57削除
桜花 散りぬる風の名残かな
鎌倉彫の硯箱を通して曾祖父とやり取りするという、SFというより心温まるファンタジーを目指されているのかなと思いました。技術者同士のわかり合えるところなど、その懐かしさは伝わっていると思います。ただこういうパラドックス的な作品は、どう収束させるのかがもの凄く困難で、例えば東京に原爆が落とされれば当然皇居は破壊され天皇家が被害にあう。これはあまりに想像しにくいことだろうと思いました。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/10 22:00削除
どんなに優れた戦闘機がつくられようが、それは人を殺します。何よりまずその痛みを感じてしまうので、このストーリーに共感できませんでした。もっと素敵な形で歴史を変えるストーリーだったら良かったのに…。
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/15 16:37削除
ライトノベルの定義はわかりませんが、若者を主な読者とした深刻ではない小説、くらいに理解しました。これまでの文横の作品系列には見当たらないタイプの小説で、内容はタイムパラドックスを含むSF仕立て。作者の柔軟な発想とストーリー展開を楽しませてもらいました。軍事(ミリタリー)オタクにしかわからないような専門用語も、小生には馴染みのあるものでした。
 ただSFを読み慣れない小生には、やはりタイムパラドックスが引っかかってしまいます。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画があります。過去に遡った主人公が、両親の恋愛がいっこうに進展しないのを知り、このままでは自分が生まれないと危機感を抱きます。そして自ら「過去」に介入して両親を近づける、という展開。この程度なら笑って楽しめる範囲です。
 しかし本作では、曾祖父に現代の技術情報を教えることで歴史が変わり、その結果、曾祖父は原爆によって結婚する前に死にます。とすると、ひ孫である主人公は一体どうなる? ……このあたり、深く考えれば頭が混乱するわけですが、あまりこだわるのはSFの読み方として野暮なのでしょう。本作ではこの矛盾に対し、軟着陸を予感させる結末にしています。
 作者には今後も、文横へ新風を吹き込んでほしいと願っています。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:31削除
SF小説? 読み物としては面白いが、作者の意図が読み取れなかった。
匿名さん (90kuq21b)2024/3/17 09:58削除
桜花 散りぬる風の名残かな 感想 藤野燦太郎
主人公僕が大学卒業後、自動車メーカーに就職。実家から通勤することになって部屋を片付けていたら、曾祖父の日記を発見。そこから妄想を交えたストーリーが始まる。

額縁小説なのだなと思いながら、進んでいく。妄想は夜に始まる。
ある夜、翌日の夜、毎晩、夕食を済ませ、今夜は‥‥、そして過去への手紙を書く。
過去への手紙ということで、最初ジャック・フィニィの「愛の手紙」を思い浮かべましたが、すぐに流れが変わり、昔見た映画「戦国自衛隊」に重なっていき、歴史を変えてしまうかもしれないという主人公の危惧へと変わっていきました。
この部分の葛藤は小説のテーマとしてよいと思いました。

僕の視点で話が進むのですが、1つのお話にするために、急いでいらっしゃる印象が強く、描写がなく説明で乗り切っておられました。曾祖父の会社の情景を、手紙を元にして描写してもいいと思いました。そうすると曾祖父の会社の情景が「入れ子」になると思いますが、より深まると思います。

歴史改変の一つが東京への核爆弾投下というやや唐突なエピソードでした。現在の定説に改変された歴史が少しずつ近づいていくというもので、ここが理解に苦しみました。このことも説明だけなので、違和感を覚えるのだと考えられます。この部分も曾祖父の会社情景に入れて描写すればもう少し納得できるようになると感じられました。
楽しく、発展性の感じられる作品でした。
池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 19:05削除
曽祖父が亡くなったのにタイムパラドクスが起きず主人公が存在していくとすれば、たとえば「実は曽祖父と血のつながりがなかった」というオチが必要かなと考えた。冒頭部分のDNAうんぬんのくだりを「精神的な絆」と理解すればつじつまはあう。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/26 11:42削除
既に鬼籍に入っている祖父との交信(手紙のやり取り)、またそれによる歴史(過去)の改変という発想がおもしろい。
飛燕という戦闘機エンジンのライセンスをドイツから陸海軍が別々に買ったという話は初めて聞いたけれど、それが事実なら悲しいことですね。一般国民は「お国のため」に困窮に耐える生活を強いられているのに、上層部では意思疎通もできないで反目し、そんな無駄なことを平気でやっていたということです。日本という国はいつも、上層部がダメで下っ端がそれを支える、という構図になっているようで、そんなのを《バカトップ問題》というそうです。

山口愛理さん (92ty90w3)2024/3/29 12:06削除
タイムパラドックスを扱ったライトノベル風の作品。アイディアや発想は面白かった。だが、その描いている世界はライトではない。
気になった点は二つ。
一つは物語を支えるキーワードとなる「日本陸軍」という美桜の言葉。これで主人公は歴史改編に気づくわけだが、私は読んでいる時、ちょっと取り残された。日本帝国に日本空軍が無かったということを知らなかったからだ。ちなみに周りの友人たちもほとんどが知らなかった。ならば若い彼女も知らなくて、ただ単にこの言葉を使った可能性もある。そのことに彼が思い至らず、すぐさま歴史改編を疑うのは無理がないか、と思った。
もう一つ。これだけ大きく過去を書き換えたのに、現実世界が見た目全く変わっていないというのもあり得ない話では。戦争や兵器、原爆という題材や過去改編の大きさゆえ、長編にしてもっと丁寧に描いて欲しかったとも思う。
しかし、いずれにしても今までになかったタイプの作品で、文学横浜のジャンルが広がったことに関しては嬉しく、次回作にも大いに期待したいと思った。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/3/29 12:09削除
上記、美桜の言葉は、「日本陸軍」ではなく「日本空軍」です。すみません。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/3/30 23:03削除
アニメーションを見ているような感覚で読んだ。この感覚がライトノベルでしょうか。
「ネタが専門的過ぎる」と自戒していらっしゃいますが、専門性が必要なストーリーであり、知識がなくても読めるように、その専門性をうまく文章にまとめ組み込まれていると思います。私は、戦時中の戦闘機の知識は0ですが、ふむふむとわからないなりに理解しながら(?したつもりで)読み進めました。
時代を隔てた相手との交信が手書きの手紙、日記。美しい女性となった幼なじみとの再会から恋愛。史実への希望を込めた関与。「こうだったらいいな」が叶えられていて満足だが、それゆえか物足りなさが残る。
十河さん (934opo11)2024/4/3 06:01削除
・いい意味でSFっぽくラノベ風で、現代が創作においても一つの変革期にあることを示した小説といえる。
・作者の想像がさまざまに飛翔するが、それをすべて容れるには紙数がたりてない気がした。
返信
返信16
管理者さん (8ywajz8f)2023/12/18 14:27 (No.1012819)削除
⑧『48時間』 由宇著
本作品に対する、感想、ご意見をお待ちしております。
「返信欄」から投稿願います。
由宇(ふくしま)さん (90o5adff)2024/2/1 07:55削除
48時間 ~作者より~

【お詫び】まず、お詫びします、ごめんなさい。
本作品を描くにあたり、特定の人を傷つける意図は心外であることに一片の曇りありませんが、お騒がせしてしまった事実を反省し、お詫びいたします。

【制作概要】初めての小説挑戦でした。普段は論文しか書いてません。高校時代、映画研究部でシナリオを書いた経験を思い出しながら、対話(語り)を軸にしました。
つたない経験則にすがりました。

【参考にした憧れの文献など】
 ◆『桐島、部活やめるってよ 朝井リョウ』・・・桐島を登場させることなしに、周囲の
  会話で(桐島を)浮かび上がらせる手法に憧れてました。
 ◆『藪の中 芥川龍之介』・・・題名が語源としてなっている、この墓碑的作品、対話か
   らもたらす、不透明な閉塞感の描き方に共鳴しました。曖昧な閉塞感。。これを可能な限り
   浮かび上がらせ、言語化として記録する。そんな、芥川の作品の模倣をモチベーションに
   本作品で描きました。

【ねらい】
 ◆現代は平安時代に似てるそうです、「平和であるにも、かかわらず、見えない権威の操
  作演出により、民の閉塞感は頂点に達している」という点です。
  現代の閉塞感を浮かび上がらせ、記録したい、と思いました。

   ・マイノリテイ―視点での、マジョリテイ―への批判。
   ・その、真逆の視点。
   ・対立する軸(パラドクス)を構造的に描き、その(構造の)中心から、(閉塞感)
    が滲みでるようにと、意図しました。
   ・(すると)対立するように見えていたものは、実は偶像的な仮想敵であり、問題
    はすべて「自分の中にあるズレである。。」という結論を表現しました・・・つもり
    なんです・・・。

 ◆これらを絡ませ、空気感を読み手に感じてもらえないかと思索(施策)しました。

【設定】取材している時間がないので、(取材しなくても)自分の仕事での経験則の事実を
    軸に創作いたしました。(題材でご迷惑おかけした、その段、謝ります)

【隠れ演出】実はこれ(隠れ演出)を、端々にしております、初めての作品なので、伝わ
      わらないのを覚悟しております、、が、もし伝わった方いたら、飛び上がるほど嬉し
      いです。ぜひ、おしえてくださいね。

【所感】書いたものの「一人歩き」。。物語書物の奥深さを改めてしりました。描いてるときは夢中で、「青い春」さながらに没頭しました。
    愚著者による、愚作品にもかかわらず、このような発表の機会を与えていただき、文学横浜の各位に御礼もうしあげます。
 
 
また挑戦(描きたい)したい、傍若無人な希望をもっております。仲間の端に加えていただければ幸いです。
藤堂勝汰さん (8ywajz8f)2024/2/8 17:24削除
由宇さん 「48時間」の感想

 本作は自分が編集人を務めて7~8年になるが、一番苦しめられた作品である。
時代はおりしも「マイノリティー」に対して擁護する風潮が高まり、それらに対して批判的な表現をするものは、出版停止や、出版禁止に追い込まれるケースも少なからず起きていた。
その中で由宇さんの「48時間」はマイノリティーである主人公「あきら」が失踪するところから始まり、彼の周辺を聞き込みをする刑事たちや、心理士などの述懐で彼の人となりが露になってくるという展開である。
主人公の「晶」は自分の擁護される立場を逆手に取り、密かに我が物顔で横暴を繰り返している。

 客観的に読めば、マイノリティーへの差別、偏見、侮蔑と捉えられなくもない内容である。
そう読む人は少なからずいるだろう。
しかし違う読み方をする人も居る。
「マイノリティー」は擁護されるべきと勝手に自己解釈し、その権利を主張し、施設の人や周りの人たちに横暴や迷惑、困らせる事を繰り返す人間もいると思う。
「マイノリティー」は全ていい人。
という思い込みだけでは済まされない現実も存在していると思う。

 僕は、なんとなくそう思っている人間だから、「やっぱりな」という感想を持った。
僕は由宇さんのこの「48時間」を擁護する気も無ければ、掲載しないと逆恨みされるなどと言う気持ちは一切ない。

 但しこの作品が小説として成功しているとは思わない。
表現が全てにおいて直截的であり、専門用語も多く「ルポルタージュ」風になっており、物語として面白みに欠けると感じた。
僕が由宇さんに書き直しを迫ったのは、専門用語を減らし行間から「晶」の強かで狡賢い局面を出せるように工夫した方がよいとアドバイスした。
周りの人間が寄ってたかって「アイツは悪い奴だ!」といっても、読んでいる人には本当に悪い奴なのかが伝わらないからである。
「晶」の言動やしぐさで読者が自分の価値基準で解釈するようにする。
これが小説の醍醐味であり、面白い所である。
そういった意味では、今作「48時間」は成功していないと言わざるを得ない。
 自分が掲載すると判断したのは、由宇さんの処女作であり、次回以降に小説の技術を上げてもらい、次回作こそ読者に違った解釈をさせないように頑張ってもらいたいということからである。
書かんとすることはそれを小説にしようとすると、ありきたりな専門用語や稚拙な言葉のやり取りだけで上手く表現できないのは、会員全員理解できるものと思う。
出来れば来年、もう一度同じテーマで書き上げてもらいたいと思う。
 著者ご本人は、「心理師」であるということです。僕は心理師の人が日々大変な思いをしながら従事されているだろうと思っています。
克己 黎さん (91bqly4e)2024/2/17 23:05削除
『48時間』を読んで 克己 黎

この作品は創作過程のなかで草稿からいくつかの改編、修正過程を経て、今回『文学横浜』第五十五号に掲載の運びとなったわけである。
作者、由宇さんはなぜ、『48時間』において、主人公、晶(あきら)がマイノリティゆえに苦悩し、グループホームで生活し、治療を受けていたのに、その庇護されている環境から、脱出し、ホームレスになろうと飛びこんだ先で事故死(※ホームレス老人男性による自殺教唆もある)してしまうストーリーを書きながら、次のことにふれていないのが、残念である。

晶が書いた書置には、

「僕の分まで生きてください。さがさないでください 晶」※百三十六頁、三行目〜四行目

また、晶がホームレスの老人に会った時に話したという言葉には、

「世を捨ててきた、死んだと同じだから、ホームレスとして暮らしていきたい」※百四十八頁、十三行目〜十五行目

と、あり、決して晶は、「死んだと同じだから」と話してはいても、「死にたい」や「死にます」「殺してください」とは言っていない。

また、ホームレスとして「暮らしていきたい」と言っているのであって、その矢先の自殺教唆、事故死であり、晶は、「僕の分まで生きてください。さがさないでください」と、だけ書置を書いているのであって、「遺書」とは書いていないのである。

作中、 
「マイノリティを庇い、いたわり、甘やかす『マイノリティ無条件庇護法』が成立した」※百三十六頁、十二行目〜下段一行目

「同じメッセージであっても、被害妄想的な「十人にひとり」ほどの受けとり方をするマイノリティは存在する。その少ない方の考えを軸にした法整備なのである。」※百三十六頁、下段八行目〜十行目

という、架空の『マイノリティ無条件庇護法』が成立した社会の中で、晶がなぜ、住みやすい、生きやすいはずなのに、生きづらさを感じ、つらくなり、「世を捨ててきた」「死んだと同じ」と感じ始めたのか。そのいきさつや晶のマイノリティゆえの苦悩が本文には書かれていない。

グループホームでの晶の素行は、
「弱そうでおとなしそうなヤツを見つけて使い走りとかにするのですよ。バカ扱いして蔑み、優越感にひたる。僕みたいな年下には敬語を使わせるかと思えば、グループホームのエリアマネージャーが見回りにきたりすると、従順です。」※百四十頁、二行目〜六行目

と、どの社会でもいがちな小悪党の性格であり、「僕」(男性であると思われるが女性とも考えられる)にセクハラをしていて、触ったため、「僕」に一喝される。※百四十頁下段三行目〜六行目

「僕」が仮に男性だったとした場合、晶は「おぼっちゃま」とホームレス老人が言っているので晶は男性となるため、晶の性的嗜好が男性愛者であることがわかるが、晶のなかのその性的嗜好ゆえの苦悩や煩悶なども、本文には書かれていない。

「さがさないで」と書いたことを、作者は、 

「演出ですね。「さがさないで」と書いて、パラドックスです。必死にさがさないと承知しないぞ、という強迫です。」※百四十六頁、下段十五行目〜十七行目

と述べているが、晶の心がなぜ、「さがさないで」と思って、「僕の分まで生きてください。さがさないでください」と書いたのかに踏み込んでいない。

また、書置は、グループホームで見つかり、前述した「僕」が発見しているため、確率としては「僕」に宛てて書かれた書置である確率が高い。

したがって、グループホームの「僕」へ、晶は、自分の分まで生きてください。さがさないでください。と、メッセージを残しているだけであり、それは、「僕」へ体を触るなどして表していた好意に対して、「僕」から一喝され、好意を断られたことに対しての発作的な行動により、書置を残して家出し、ホームレスになろうとしたのである。

しかし、晶の純情による行動は、ホームレスの自殺教唆により、事故死になってしまう。誤ってつまづいたのか、飛びこんでしまったのかまでは読者にまかせる、という意図であるだろうが、晶の心理的な描写がいっさい入っておらず、それゆえ、晶が、いかにマイノリティゆえに苦しみ、悩み、辛くなり、恋をしても傷つき、生きる価値さえないから、甘やかされている家から出てまでホームレスとして、それでも「生きて」暮らしたいというのが、なかなか伝わらない。

「弱者に寄りそう、生きづらさを抱擁する」※百三十七頁、下段十一行目
はずの庇護法であるのに、晶は、その弱者に寄りそう、生きづらさを抱擁する法では、自分を守りきれなかった。

本文には、何箇所もマイノリティに対する区別がされている。

人間、生を受けて「生きたい」と思うのは必定であり、生きづらさを感じている晶の精神的苦悩、葛藤を描いていないため、本文はただの冷たい文句の羅列となってしまう。

「弱者に寄りそう、生きづらさを抱擁する」スローガンを述べられたが、次の作品を書かれるならば、弱者の内面的葛藤に寄り添い、生きづらさとは何か、また、抱擁するような温かみのある文章を書いていただけたらと願わずにはいられない。

以上、『48時間』の感想と問題提起とさせていただきたい。

2024.2.17克己黎
野守水矢さん (91n68ykn)2024/2/25 19:10削除
初稿の校正を依頼されたとき、私は編集人の藤堂さんに向けて以下の文面のメールをお送りし、掲載に反対しました。
「由宇さんの作品「48時間」はざっと読みましたが、校正できません。掲載不可です。差別表現どころか、差別思想の露骨な表現です」

藤堂さんに意見を送った人は私だけではなかったようです。発表作はこれらの意見を受けて表現を修正されたものでしょう。初稿と比較すれば、たしかに表現はマイルドになっています。ご多忙の中での藤堂さんのご尽力、由宇さんの改善努力が目に見えるようです。そこは感謝いたします。
しかしなお、改善は不十分です。作者の意図から離れて、誤ったメッセージが読み取られてしまいます。

主人公が失踪して死亡したことに関し、刑事はいったい何を目的として捜査したのでしょう。刑事は主人公の生前の性格や行動を明らかするために聞き取り調査をします。そして、死後の取り扱いを決めました。
「マイノリティが自殺あるいは事故で死んだとき、死者は生前の性格や行動によっては取り扱いに差をつけられる」これは正当化できるでしょうか。
どうやらこの作品の世界では、「マイノリティの死後の尊厳は、生前の性格や行動によっては守られなくてもよい場合がある」ようですね。そして、尊厳を守った取り扱いをするかどうかを決めるのは、この作品の世界では「刑事」です。
この作品は現実の社会にどのようなメッセージを訴えようとしているのでしょうか。作者は何を表現したかったのでしょう。そこが伝わってきません。マイノリティという用語が指すのは弱者ですよね。
現実の社会では、ジェンダー、障がい、老い、性自認、性的指向、ルーツとなる民族、出身地域、政治的迫害、経済的困窮、人間関係等々さまざまな理由で「生きづらさ」を抱えている「弱者」がおおぜいいます。
平成30年版の障害者白書*に「国民のおよそ7.4%が何らかの障害を有して」いるという記述があります。簡単な計算でわかりますが、これは「40人の集団には95%の確率で障害を有した人がいる」という意味です。「弱者」全体を合わせれば「40人の集団にはほぼ確実に弱者は存在する」のです。「文学横浜の会」も例外ではありません。
「あなたは性格や行動によっては、死後の尊厳を守られないかもしれません」と仲間に言われて、傷つかない人が文学横浜の会にいるでしょうか。
実際に、この作品が掲載されることを理由に退会した仲間がいます。
私には、この作品が社会の非難に耐えられるものだとは到底思えません。私はこの作品は、作者の意図がどうであれ、結果的に多くの人を傷つけています。そして、文学横浜の会の仲間を実際に傷つけたことを、悲しく思っています。猛省を促します。

次作は、自作の与える影響を熟慮し、自重してください。
*「平成30年版障害者白書(内閣府)」https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h30hakusho/zenbun/siryo_02.html
上終結城さん (90mdbym0)2024/3/5 00:39削除
本作品を形式と方法、登場人物などの技術面にしぼって考えてみます。
作者の「意図、狙い」には、「主人公(本作では晶)を登場させないで、周囲の人間の会話で主人公を浮き上がらせる手法」を試みた、とあります。

 主人公自身を登場させず、主人公と関係のあったもの同士の会話だけで、その人物像を浮かびあがらせる手法。これに成功した文学作品としては、三島由紀夫の戯曲『サド侯爵夫人』があります。この戯曲は、怪物的人物として歴史に名を残すマルキ・ド・サド(サド侯爵)を、下記の登場人物(すべて女性)の会話だけで描写します。

 ①サド侯爵夫人ルネ:獄中のサドを献身的にささえ、出獄のための努力を続ける
 ②ルネの母親:法・社会(世間)・道徳を代表。サド侯爵を非難
 ③ルネの妹:ルネには秘密でサド侯爵と関係をもつ。無貞操な女を代表
 ④男爵夫人:カトリック信仰と敬虔さを代表。サド侯爵を不道徳とみなす
 ⑤伯爵夫人:サド侯爵の快楽・肉欲を理解し、かつ自ら実践する快楽主義者

ここにはサドの擁護者も批判者も理解者もいます。つまり、これらの登場人物が、その場にいないサドに様々な視点から光をあて、その立体像を描きだす構造になっています。登場人物の適切な選択が、作品を奥ゆきあるものにしているわけです。

 さて『48時間』では、下記の人たちが晶について語ります。

 ①グループホーム住人  ②公認心理士  ③産業医  ④ホームレス老人

このうち、グループホーム住人、公認心理士、ホームレス老人は、晶を厄介者または嫌な奴として扱っています。唯一産業医だけは晶をある程度理解し、つぎのように分析します。彼は幼少期に親から肯定的なメッセージを受けられずに育ったため、自分を認めてもらえる場所を探して、精神的彷徨を始めた。しかしこの産業医も、晶の傷心の治癒や更生のために真剣に行動したようには見えません。つまり晶のまわりには、彼に寄り添い、共感する存在がいないのです。

 ここでたとえば、産業医が晶にもっと同情し、親身になってアドバイスする、あるいは幼なじみの女性が登場して、やさしく純真だったころの少年 晶について証言する、などのエピソードがあったらどうでしょう。晶の人物像に立体感が出て、作品の奥ゆきがより深まったかもしれません。

 以上、ひとつの意見です。参考にしてください。
里井雪さん (90k4n5mn)2024/3/6 20:33削除
『48時間』感想

 「作者より」で作者ご自身が「お詫び」を出しておられます。何かと物議を醸した作品でした。感想の主旨に反するかもしれませんが、せっかくの機会ですので、私見を述べさせていただきます。

 実は、私、音声作品のシナリオを書いて、DLsiteというダウンロードサイトから発売差し止めとなった経験があります。江戸川乱歩の『蟲』をオマージュした18禁(アダルト向け)作品でしたが、ネクロフィリアを扱ったため、同サイトのレギュレーションに引っ掛かってしまいました。

 ネクロフィリアは際どい分野ではありますが、川端康成の『眠れる美女』など、過去、文豪といわれた人もテーマにしていますので、問題ないと考えていましたが、「規約」に明記してあるので、文句の言いようがありません。ちゃんと確認しなかった私はバカだったということです。

 ことほど左様に、ウエブサイトでも、同人誌でも、不特定多数の目に触れ、なんらかの表現をするものには「社会的責任」があると考えます。

 ですので「ルールが必要だ」と私は思っております。本件の掲載可否もちゃんとした規約があれば、「お騒がせ」になることはありませんでした。

 由宇さんご自身も、今後、文学横浜のレピュテーションリスクに配慮した作品を寄稿してほしいですが、問題点は「文横に明確な編集方針がない」ということではないでしょうか? そもそも、何のために発行している雑誌か? が分かりません。



 本題に入ります。私は、本作品の校正も担当しましたので、「オリジナル」も拝読いたしました。用語の使いなどは別として、サスペンス小説としての面白いとは思いますが、「そちらの方」に目が行ってしまって、肝心のストーリー展開が頭に入ってきません。そういう意味でも、もっと普通のシュチュエーションで、サスペンスをお書きになればいいのに……と思いました。

 次以降の作品ということになりますが、サスペンス、スリラー、推理小説、という方向性を強めることで、フィクションとしての面白さを追求された方がよいのかな? と感じました。
原りんりさん (923tbrlg)2024/3/9 14:10削除
48時間
全体として劇画のライトノベル化の雰囲気がありました。漫画の方が、この内容だとよりインパクトを表現できそうな気がします。
マイノリティーとマジョリティの立場を逆転させてしまった社会の不条理をSFタッチで描いている作品だと思いました。展開も技術的に高度で、過去にさかのぼる手法、他者に語らせる手法など、読者をあきさせないテクニックのうまさを感じました。
ただ問題は二つあって、一つは作者のマイノリティーの概念がはっきりしていない点です。生きずらさを感じる者までがマイノリティーに入ってしまうと、ほとんどの人間がそれに属し、いわゆるマジョリティはいなくなってしまう気がします。もうひとつは、通底音として感じる作者の強い“憎悪の感情”です。なんでこんなに晶を憎むのか。この場合、晶に代表される人々は障害者やLGBTなどの弱者ではなく、SNSでよく問題にされているような迷惑行為をする若者達なのではと思いました。そうではなくて、本当にマイノリティーがある種の力を持った場合、例えば電車で席を譲らなかっただけで周りから糾弾されてしまったり、点字ブロックに文句を言っただけで警察に連行されたり、そういう恐怖を描くSFが読みたいと思ってしまいました。
いまほり ゆうささん (922q9o5y)2024/3/12 15:25削除
私は、一人一人が素直に意見を言えなくなる社会というのは本当に怖いと思っています。もしかしたらこの作品でもそういうことを伝えたかったのかもと最初は思いました。ただ普通に考えて、意見が言いづらいのは常に少数派…マイノリティーなのではないでしょうか?Googleで「マイノリティー」を検索すると「社会的少数者」でありその社会の力関係によって少数者、少数派、もしくは弱者の立場に属するものやその集団をさす。そして大富豪も少数派ではあるけれど、彼らをマイノリティーとは呼ばない。少数派であることが原因で、差別や偏見を受けやすい集団、人をそう呼ぶ。という趣旨が書かれており私も異存ありません。
 「…マイノリティを庇い、いたわり、甘やかす『マイノリティ無条件庇護法』が成立した。」という一文から始まって、つづられていく内容には今現実の社会の中で苦しみ生きづらさを感じているマイノリティーの人たちの状況に寄り添おうとする姿勢が全く感じられず、反対に庇護法ができた場合の起こりかどうかもわからない弊害を描こうとしているように思えて大きく首を傾げてしまいました。ただ、言論の自由は尊重されねばならず、私と異なる意見主張を描き出す自由があるのはもちろんですが…。
金田さん (92e9fkev)2024/3/15 18:28削除
作者が何を書きたいのか、何を言いたいのか、よく判らなかった。

晶の文頭の一文のみで、どうして自殺願望なのか、生きづらさを感じているいるのかが判るのfだろう。
設定があらっぽくはないか?
池内健さん (92jz72t6)2024/3/19 20:04削除
ある集団を「無条件」に庇護する法律が成立したという設定に無理を感じた。いくら社会的に守らなければならない人々だとしても、何らかの条件をつけなければとんでもない特権集団と化してしまう。

 作品内では「外圧」に屈したという理由が挙げられているが、そんな法律を押し付ける海外勢力の目的は何か。某国を弱体化させることなのか。そうかもしれない。ただ、こうした法律が成立する時点でその国はすでに独立国としての基盤を失っている。
港朔さん (92fwbt2d)2024/3/26 11:34削除
現代日本社会の病を描き、警鐘を鳴らしている。そのような意味で、本作は時宜を得た名作ではないかと思いました。
 現代日本社会が云うところのマイノリティや、同じくLGBTと呼ばれているものには、私も多くの疑問をもっています。そのような疑問を描き出しているという点において、貴重な作品ではないでしょうか。ローゼンハン実験というものを紹介していただいたのも、よかったです。精神病というものの危うさを示していますね。

匿名さん (90kuq21b)2024/3/26 23:20削除
48時間 感想 藤野燦太郎

自分の作品を棚に上げて意見を述べさせていただきます。一生懸命に書かれたのに、大変損をしている作品だと思いました。
作者の日ごろ感じている違和感を小説として伝えたかったようですが、作品ではうまく機能していないと思います。3つだけ意見を述べさせていただきます。
1.最初から最後まで断定調で、上から目線でした。読者は一般にへそ曲がりで、「教えてあげよう」という調子の作品に対しては、「自分はそう思わないなあ」と反発していくだけと思います。「下を向いて書くと下品になる。最も尊敬している恩師に捧げるつもりで作品を書きなさい」といった作家もいます。
2.登場人物、刑事A、B、グループホームの住人、カウンセラー、産業医、ホームレスに至るまで、文章のリズムが同じで、批判的で同一人物のようにさえ思えました。
この人たちには年齢、服装(ブランド物の上着を着てとか、下水のような匂いを放っていたとか)、姿、顔の印象(メガネ、禿げ頭)など何も情報がありません。人物が読者の脳裏に焼き付くようにしていただくとよいのにと思いました。
3.「産業医」はグループホームの職員の健康を守る医師です。入所者を診るのは「嘱託医」、「施設医」、または「配置医師」です。自分は特別養護老人ホームの配置医師もしているのでよくわかります。「施設医」としておけばよかったと思います。
山口愛理さん (92ty90w3)2024/3/29 18:36削除
失踪した晶をめぐって、マイノリティ保護法という架空の法律をもとに、刑事A、B、グループホーム住人、カウンセラー、産業医の談話が小説を構成する柱となって進んでいく。彼らの談話で晶の人間性や社会問題が明らかになっていく過程はなかなか興味深かった。
ただ、作者がプロローグに思いを入れ込みすぎているように受け取られてしまう。ここは地の文として、もっと抑えた客観的な表現の方が良かったのでは。例えば「マイノリティを庇い、いたわり、」までは良いが「甘やかす」は主観的表現なので「優遇する」などに変えるとか。また地の文なので、プロローグ最後の方にある「作者は」「読者にも」という言葉も無くて良いと思う。ここでは作者とか読者が顔を出さず、もっと淡々とした方が中の談話が引き立つ。
小説の着眼点は良かったと思うし、避けて通りたい問題を主題にしたことも悪くないと思う。近頃『プラン75』『月』など映画も触れがたい問題に触れて高評価を得ている。その点で、本作品も意欲作であることに違いない。
ただ、晶の見方が他人からのみで、本人の言葉や行動の描写があまりなく、一人の人物としての掘り下げが少なかった。一般論は多かったが晶個人の人物像がぼやけていて、本質がわかりにくかったため、全体がクールで平板な印象になってしまったのが残念だ。人は多方面から見ると必ず違ったものが見えてくる。そこには温かい何かも隠れているはずで、そんなエピソードも盛り込んで欲しかった。
大倉 れんさん (91n21k7s)2024/3/31 17:50削除
タイトルからまず、確か、「48時間」という映画があったな…と連想した。
リミットは迫るが、みな他人事で、刑事他、晶について証言した人にも、専門的分析をした産業医、カウンセラーにも緊迫感がない。その無関心な外野の人間からの視点だけで晶を書いているので、真相がわからずじまい。顔のない登場人物で生気のない202X年の未来にやるせなさが残った。
 産業医のところはなかなか理解できなかった。
 わかったことは、登場人物すべてがある種欠陥、故障をもつマイノリティーだということ。100%健常者などそうそういないもの。だからこそ助け合い思いを寄せ合っていくべきというのが、この作品に対する(作中の言葉を借りて)私のアンチテーゼだ
十河さん (934opo11)2024/4/3 06:00削除
この種の作品を書く人が世にはいるが、同人の中にもいるとは思わなかった。一読、どうしてこういう作品が出てくるのだろうと、寒々とした気持ちになった。これは創作というよりも、むしろアジテーションでありプロパガンダだ。それに物語の衣を着せたもの。

 この作品も「小説」の一種である、という人もいるだろう。小説というジャンルは間口が広く、ほとんどどのような形態・志向のものも含んでしまうので。

 しかし、ぼくの考えでは、これは小説ではない。小説を書くという作業は、同人みんなが知るように、いばらの道を行くようなものだ。が、その苦行に何らかの意味を見いだして、創作を続ける。

 だけど、この種の作品を書くことに意味を見いだすことは困難だ。だから、これは小説ではない、とぼくは思う。

 小説とは読者に、たとえば心がたがやされて豊かになり、感動し、視界が広がり、人生についてより洞察できetc.,etc.……、つまり、プラスにむかう力を、あるいは少なくともマイナスにむかわない力を、与えるものである。

 この作品を読むと、残念ながら気持ちはマイナスにむかう。この意味からも、これは小説ではない、とぼくはしたい。
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